34-6705

商品番号 34-6705

通販レコード→英ダーク・マルーン銀文字盤

3トラック録音によるマーキュリー・リヴィング・プレゼンス ― 石灰岩や大理石などがふんだんに使われ、随所に聖人の彫像やレリーフが配置されている教会の奥へ進んで後方を見上げると、ローズ・ウインドーとよばれるゴシック様式の透かし彫りが目に入る。ニューヨークの5thアヴェニューにある聖トーマス教会は、1913年の完成で、本堂部分の高さは約30メートル。出入口となっている柱廊玄関は、第二次世界大戦後、平和への願いを込めて作り直された。作曲家、教育者としてフランス音楽界に多大な貢献を果たしながら、病弱のための47歳で亡くなった世界的女流オルガン奏者のジャンヌ・ドゥメシュが師事した、フランスのオルガニスト、作曲家マルセル・デュプレ(Marcel Dupre, 1886〜1971)は欧米各地で2000回を超えるオルガン演奏会を開催し、また全10回にわたって、バッハのオルガン作品全曲を暗譜で演奏するという偉業も成し遂げました。デュプレは幼少時より神童と持て囃され、精力的に演奏活動を展開しただけでなく、指導者としても活躍。弟子にはオリヴィエ・メシアンやガストン・リテーズ、ドゥメシュ、アメリカを代表する黒人オルガニスト、ヴァージル・フォックス、更には合唱指揮者として活躍したロジェー・ワーグナーなど錚々たる顔触れが揃っており、その功績の大きさは計り知れない。「オルガン本来のおもしろさ、つまり、オルガンで聴いてはじめて意味のある音楽」を残した作曲家として、第一にヨハン・ゼバスチャン・バッハ、ロマン派の大家、セザール・フランク。そして三人目がデュプレです。デュプレは1886年生まれ。18歳でパリ音楽院に入学、演奏・作曲活動を開始。1920年代に、バッハの作品全曲を暗譜して演奏する連続コンサートを開き、オルガニストとして名をあげました。1926年にパリ音楽院オルガン科教授として、デュリュフレ夫人やマリー=クレール・アラン、メシアンなどを指導しています。1934年、サン=シュルピス教会のオルガニストに着任。第2次世界大戦後の1947年、アメリカ音楽院総長に就任するとともに、フランスのフォンテーヌブロー音楽院の院長にも就任する等、世界を股にかけ活躍。1954年には古巣であるパリ音楽院の院長となりました。1960年代半ばまでデュプレは作曲家として創作を続けていました。また、デュプレはバッハを丹念に研究していたことで知られています。作風も、どちらかというと20世紀的ではなく、調性にもとづく楽曲が少なくありません。変奏曲やフーガのエンディングが次第に盛り上がっていくのも、前時代のオルガン音楽の作り方を踏襲しています。そんな彼の作品も数多く残されていますが、どれも技術的に難しく、彼以外の人が演奏するのは困難とされていました。マーキュリー・リヴィング・プレゼンス・レーベルにパリのサン=シュルピス教会、ルーアンにあるサントゥアン教会や、デトロイトのフォード・オーディトリウムのオルガンを使って録音しています。
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オルガンの鍵盤は強く押そうが弱く押そうが、ピアノのようにその事によって音量や音色が変化するものではありませんから、常にモノトーンな音色になってしまいます。そこで、追加されたのが「ストップ」と呼ばれる演奏用の補助装置で、音の厚みを増すことで強弱の差を表現できるようになっただけでなく、多彩な音色をも獲得していきました。それはもう、「一人オーケストラ」とも呼ぶべき楽器であり、進化した「ロマンティック・オルガン」の中で最大規模を誇ったのが、ヴィドールが終身オルガニストをつとめたパリの、サン=シュルピス教会のオルガンには100前後のストップが装備されていて、その効果を十全に使いきるために書かれたのがヴィドールによる「オルガン交響曲」です。昨日の「安価な装置で適度な美音を鳴らすより、高級な装置で真に高級な美しさをひき出す方がはるかにむつかしい。」という話から繋がることでもあるのですが、一般に知られざるオーディオの罠が、オルガン録音の再生にあります。オーケストラでもそうですが、オルガンの低音もまた風のような軽さを持っています。決して、ドスン・バスンというような、分かりやすい「迫力満点」の低音などとは一線を画する低音です。あのドスン・バスンという音はここで述べている低音と較べればもっと上の領域、中低音とも言うべき帯域の話です。そして、オーディオにとって再現するのが途轍もなく困難なのが、この真の「低音」なのです。その最低音は32フィート管が響かせる16Hzの重低音です。この重低音がレコード盤に刻まれていて、耳に音として聞こえないかもしれないですが、スピーカーの前にタオルを垂らしたら、風が吹く様に揺れることで感じたものです。
昔から鮮烈なサウンドで知られていたマーキュリー・レーベルは、音だけでなく、演奏の方も勢いの良いものが揃っているのが特徴。1945年にアーヴィン・グリーン、バール・アダムス、アーサー・タルマッジによって設立されたマーキュリー・レーベルは、モノラル後期に活動を開始し、ステレオ初期を中心とした20年ほどのあいだに数多くの素晴らしいディスクを世に送り出しました。ラファエル・クーベリックやアンタル・ドラティ、ポール・パレー、スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ、ヤーノシュ・シュタルケル、ヘンリク・シェリングといった有名アーティストたちも、ここでは誰もがシャープで活気に満ちた演奏をおこなっています。しかも、オーディオ好きの間でも有名なマーキュリーのサウンドは、ステレオ初期に制作されたものが大半ながら、どれも音響条件は申し分なく、細部まで捉えきった情報量の多さは、当時ずば抜けたものと評されていました。実際、通常の楽音だけでなく、バスドラの重低音や、カノン砲の射撃音、大量の鐘の音といった難物も高水準に再現するあたりは、このレーベルの実力を改めて確認させてくれるところです。「You are there」を謳い文句に、音が生まれるその場にいるような臨場感を再現するマーキュリー独自の録音方法によって収録された名盤の数々は、今聴いても実に新鮮ですし、戦後まもなくの活気に満ちた演奏スタイルを味わえる点で、その存在感には非常に大きなものがあります。
フランク:英雄的小品、コラール第1~3番。1957年ニューヨーク、聖トーマス教会での録音。
GB MER AMS16030 マルセル・デュプレ フランク・英雄的…
ヴィドール:アレグロ~交響曲第
デュプレ(マルセル)
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
1995-03-10