34-14743

商品番号 34-14743

通販レコード→英レッド・アンド・ホワイト Phase 4 Stereo 黒文字盤

若い頃は気付かなかった音楽の本質のようなものに触れることは間々あることだ ― フェイズ4方式で録音された、エーリヒ・ラインスドルフによるリヒャルト・シュトラウスとワーグナーの録音は『ハイ・フィデリティ』誌で、その大きく広がりのあるオーケストラ・サウンドが高く評価されました。本盤は1970年代の初めに、英デッカが当時この会社の売りだった〝PHASE4〟で録音したもの。音は今聴いても新鮮ないい響きだ。この〝PHASE 4 STEREO〟は、専用の「4トラック」レコーダーを中心とした機材で録音したシリーズで、1962年に始まります。舞台裏で演奏される別働隊を個別に録音することで、違う方向から聴こえてくる再生音は鮮明で、発展的と勘違いされがちな、1970年代に各社から発売されていた、実験的4チャンネル盤とは別物です。もちろん、通常のステレオ装置で聴くことができます。当初は20チャンネルのコンソールと4トラックレコーダーを使用、以後機材をアップデートしているものと思われます。ワーグナーの歌劇《タンホイザー》より『序曲とヴェーヌスベルクの音楽」のコンサート・ヴァージョンと、リヒャルト・シュトラウスの楽劇《ばらの騎士》からの組曲。楽劇《ばらの騎士》は、ウィーンの貴族社会が育んできた古き良き欧州文化の爛熟期の作品です。〝ばらの騎士〟とは婚約の印として銀のばらを渡す使者のこと。ウィーンを舞台に、元帥夫人の若い恋人オクタヴィアンが若い娘ゾフィーと本当の恋に落ちる、という物語です。リヒャルト・シュトラウスは『エレクトラ』で既にフーゴ・フォン・ホーフマンスタールと共作していたが、それは舞台戯曲として上演されていたものに曲をつけただけであった。それゆえこの《ばらの騎士》こそが2人の大家による長年の実り豊かな作品の実質的に最初の共同作業となった。「このオペラでは一見本物に見えるものが実は虚構なのです」とホーフマンスタールは言っているが、物語当時の貴族の間で行われている慣習という設定である〝ばらの騎士〟は、実際にはホーフマンスタールの創作である。しかし第一次世界大戦で表面上は失われてしまった欧州文化と信じさせられるくらいに、19世紀ロマンに浸る作品として、人々の心の奥底に根強く印象付けている《ばらの騎士》は名演に恵まれています。この《組曲》はオペラから抜粋した作品で、全曲を交響詩に編み直した、音楽の切れ目がない構成となっている。最初はオペラと同様、元帥夫人とオクタヴィアンが愛し合う音楽で、ホルン全員が同じ旋律を一緒に吹いて始まります。勇壮ですが、その最初の実音〝シ〟はホルンにとって鳴りにくい音。名ホルン奏者を父に持つリヒャルト・シュトラウスの作品は、それまでの作曲家とは別次元の音をホルンに要求します。ホルンの最低音が出てくる楽劇《ばらの騎士》や、通常の最高音より上の音が出てくる交響詩《家庭交響曲》で要求される音域。スラーのついた3連符が次々に登場する、細かい動きなどは、リヒャルトが父フランツ・ヨーゼフ・シュトラウスの演奏に身近に接して〝吹ける〟と思ったからそう書いたのでしょうか。楽譜を見ると、父の偉大さも感じます。〝ばらの騎士〟であるオクタヴィアンがゾフィーと出会う場面は、うっとりするほど甘美な音楽です。2人の恋のときめきが甘く歌われるなかで、ホルンの甘い響きも聞こえます。元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーによる有名な三重唱は、組曲ではワルツのあとに登場します。ここも、オブリガートでのホルン・ソロや、低音を動く箇所もあり、オーケストレーションが実に上手い、ホルンの聴かせどころです。
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作曲家リヒャルト・シュトラウスの父フランツ・ヨーゼフ・シュトラウス(Franz Joseph Strauss, 1822年2月26日〜1905年5月31日)は、バイエルン国立歌劇場の首席ホルン奏者を40年以上にわたって務める一方、ミュンヘン音楽・演劇大学で教鞭を執り、指揮者でもあった。ヴィルトゥオーゾ・ホルン奏者であると同時にギター、クラリネット、ヴィオラの演奏にも卓越した腕前を持ち、指揮者のハンス・フォン・ビューローは「ホルンのヨアヒムである。」と述べている。彼は古典派音楽を偏愛しており、中でもモーツァルトの音楽を好んでいた。また、特にハイドンとベートーヴェンを讃えていた。君主であり雇い主であったバイエルン王ルートヴィヒ2世は、リヒャルト・ワーグナーによる新しい音楽を国立歌劇場で上演して普及に勤しんでいたが、フランツ・ヨーゼフはワーグナーの音楽に共鳴していなかった。人としても音楽家としてもワーグナーから距離を置いていたフランツ・ヨーゼフであったが、彼はその厳格なプロ精神によって自らの持つ卓越した技術の全てをワーグナーの楽劇における重要なホルンソロに捧げていった。ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』、『ラインの黄金』、『ワルキューレ』の初演でホルンパートを率いた。ワーグナーは「(フランツ・ヨーゼフ)シュトラウスは大嫌いな奴だが、彼がホルンを吹いたら誰も不機嫌ではいられない。」と述べている。作曲家としてフランツ・ヨーゼフは、ホルンのための楽曲によって記憶される。2つのホルン協奏曲の他に数多くの小規模作品を遺した。1875年にアマチュアオーケストラWilde Gung'lの指揮者に選出されたフランツ・ヨーゼフは、21年間にわたってその職を務めた。奏者の中には息子のリヒャルトもおり、そこで実用的な管弦楽法を習得するとともに、初期の楽曲をこの楽団のために作曲している。フランツ・ヨーゼフが同時代の音楽を毛嫌いしたことは息子リヒャルトの幼少期の音楽観の形成にも影響を及ぼしている。息子の幼少期の音楽的成長に大きな影響を与えたフランツ・ヨーゼフは、息子を古典派へと向けさせ、当時の様式からは遠ざけた。その通りリヒャルトは伝統的な方法で作曲を開始し、ミュンヘン大学在学中に父の影響下から脱してはじめて同時代の音楽に惹かれていったのであった。
リヒャルト・シュトラウスの作曲した《ばらの騎士》(Der Rosenkavalier)作品59は、ワーグナーの後期のオペラに比肩する長大な作品規模と大掛かりな管弦楽ゆえにしばしば楽劇と呼ばれるが、出版時のタイトルは Komödie für Musik in drei Aufzügen:Der Rosenkavalier ― 3幕の音楽のための劇『ばらの騎士』とあり、リヒャルト・シュトラウス自身の命名ではない。音楽内容的には、「モーツァルト・オペラ」を目指したものである。『サロメ』、や部分的には無調ですらあった『エレクトラ』の激しいオーケストレーションや前衛的な和声はすっかり影を潜め、物語に即して、親しみやすい平明な作風で書かれている。声楽パートもワーグナーのドラマティックなものから、モーツァルト的な、リリックな歌唱スタイルになっている。物語の舞台はマリア・テレジア治世下のウィーンに置かれ、ロココの香りを漂わせつつ、遊戯と真実を対比させた作品として仕上げられた。プロットが『フィガロの結婚』と似ているのはこのためである。但し、ほとんどが重唱曲でアリアは一切なく、テノールは第1幕でかなり揶揄的な扱いで登場するのみであるなど、リヒャルト・シュトラウスのイタリアオペラ嫌いがかなり反映されている。それまでのリヒャルト・シュトラウスの前衛的な作風に好意を示していた批評家や作曲家たちからは、本作は「時代遅れ」で「大衆迎合的」だと批判されたが、聴衆の支持は絶大で、今日ではリヒャルト・シュトラウスの代表作と見なされているばかりか、ドイツ圏の主要歌劇場や音楽祭において最も重要なレパートリーの一つに数えられる。大作であり歌手への要求項目も多いため、水準の高い上演は容易ではないが、各歌劇場がこぞって意欲的に取り組むこともあり、録音や録画でもロングセラーに耐えるような演奏が数多く残されている。ドイツ圏の外でも人気は高く、比較的小規模上演の可能なモーツァルト作品やヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ『こうもり』などに伍して最もよく上演されるドイツオペラのひとつである。
エーリヒ・ラインスドルフ(Erich Leinsdorf, 1912~1993)はウィーンのユダヤ人家庭に生まれ、アントン・ウェーベルン率いる労働者合唱団の練習ピアニストからキャリアを始め、22歳の若さでザルツブルク音楽祭に招かれ、1934年からブルーノ・ワルター、アルトゥーロ・トスカニーニの下で練習ピアニストとして修行を積んだ後に、ヒトラー率いるナチス・ドイツ政権によるホロコーストから逃れて渡米しました。1942年に米国籍を取得。その後クリーヴランド管弦楽団、ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団、ニューヨークのシティ・オペラの音楽監督やメトロポリタン歌劇場の音楽顧問も歴任し、1962年からシャルル・ミュンシュの後任としてボストン交響楽団の音楽監督に就任。この時期にドイツ音楽のスペシャリストとして評価を固め、膨大な数の録音を残しています。1969年にボストン響から離れた後はウィーン交響楽団、ベルリン放送交響楽団の音楽監督となるなど、主にヨーロッパを中心として活躍しました。ラインスドルフは耳の良さに定評があり、あまりにも厳格な要求は楽員たちから煙たがられた。演奏に3時間を費やすヨハン・ゼバスチャン・バッハの「マタイ受難曲」のような大曲でも隅から隅まで暗譜、リハーサルにも楽譜なしで臨みながら楽団員に対し、「そこのオーボエの君、最後4分の1音だけずれていたよ」と詳細に指摘。すわ、パート譜を確認すると、マエストロの指摘通りといった具合で、逃げ場がない。ラインスドルフといえば知的で整理された中にも、時としてピリッとしたスパイスを効かせた玄人好みの音楽造りをする人です。本盤のリヒャルト・シュトラウスの《ばらの騎士組曲》だけでなく、リヒャルト・ワーグナーの歌劇『タンホイザー』よりのコンサート・ヴァージョン ― 序曲から切れ目なしに第1幕のバッカナールへ移行する形は今日、「パリ版」として定着してしまっていますが、厳密にはこれは「ウィーン版」と称されるべきで、実際に新全集版では「ウィーン版」として先の「パリ版」と区別が行われている。 ― による《序曲とヴェーヌスベルクの音楽》でもウィーン風の伝統に則した音運びをしていますが、速いテンポの途中での突然の急ブレーキなどなど、アンサンブルの整った演奏は、それも厳格なトレーニングの成果でしょうか、なかなか聴き手の注意を逸らせない演出で聴かせます。またオペラからコンサートレパートリーまで、何でも振れる職人気質が災いして、実力のわりには日本での評価は低かった。若い頃の演奏は整ってはいるものの幾分冷めた部分があって、その点が人気のなかった原因とも思えますが、来日は1978年にニューヨーク・フィルハーモニックと、レナード・バーンスタインの代役としてでしたが、べートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は「驚くべき巨匠の音楽」と、玄人筋から絶賛された。1980年代以降の晩年の演奏は、知的でよく整ったバランス感覚の優れた音楽造りに格調の高さとヒューマンな暖かさが備わったのを感じさせます。
  • Record Karte
  • Engineer – Arthur Lilley, Cover, Illustration – Susan Obrant, Design – Farmlett, Barsanti & Assoc., Producer – Tony D'Amato. 1969年ロンドン録音。英DECCAが開発した4チャンネルステレオ再生システム、〝Phase4ステレオ〟は、1963年にデッカ・アメリカが開発した20chマルチ録音を4トラックに収録するという、当時としては画期的な録音方式でした。その後ヨーロッパへもデッカはこの方式を取り入れ、クラシック音楽のLPは1964年に初発売され約200枚のクラシックLPが〝Phase4〟で発売されました。
  • GB LON SPC21037 エーリヒ・ラインスドルフ ワーグナー…
  • GB LON SPC21037 エーリヒ・ラインスドルフ ワーグナー…
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Mahler: Symphony No. 1; Wagner; Strauss
Universal Music Australia Pty. Ltd.
2019-11-01