34-15331

商品番号 34-15331

通販レコード→英カラー・スタンプ・ドッグ黒文字盤

現代音楽を予見する如く、水の滴りのような音型。 ― 独特の重厚な音響が瞑想的な美しさを感じさせるオルガン曲を書いた、セザール・フランクは1858年1月22日、ノートルダム大聖堂にも比す献堂式(1857年)から間もない新築となったサン=クロチルド教会の主任オルガニストとなり、このオルガンの任務を生涯にわたって務め続ける。フランスのオルガン職人一家に生まれたアリスティド・カヴァイエ=コルの手による〝シンフォニック・オルガン〟が1859年に設置されたのだ。カヴァイエ=コルは、徐々に強弱を変えていくことができる「レシ鍵盤」を考案し、ドイツのオルガンに倣って、増やした基音のストップとストリングス系のストップに、管楽器系のパイプと合奏させることで、当時のオーケストラに似た響きを作ることができるようにした。このオルガンに魅了されたフランクは、このオルガンの優れた響きと楽器の性能のなかで、即興演奏家として熟達し、また、1869年にノートルダム大聖堂でブルックナーの演奏を聴き、ドイツのオルガン音楽とそれらの奏法を知り、深めた理解でオルガン作品のみならず他の分野の作曲家としても名声を得ていきます。歴史の悪戯か、フランクを魅了したオルガンが設置されることになったことには、教会オルガンが一度壊されたことにある。1789年のフランス革命によって、「教会は権威そのものであって、自由・平等に相応しくない存在である」と考えた民衆たちは、次々に教会のオルガンを破壊していきました。そのため、フランスにおけるオルガン音楽の空白期間が19世紀の半ばまで続いたのでした。しかし、復興されたオルガンで、思いもよらない音楽の発展が起こりました。文化的な混沌の中、カヴァイエ=コルの名器と、当時全く無名だったフランクとの出会いは、荒廃したフランスに一条の光をもたらす。近代・現代へと続く、香り高いフランス・オルガン楽派が萌芽したのだ。良くも悪くも音楽の大衆化が進み、鳴り物入りが横行した時代、フランクは只管真の音楽を追求した。それまでの宗教音楽とは違い、フランクは信じる者の心のありよう、人間の中にある感情を見逃さない、ロマン派らしい立ち位置で作曲をしました。カヴァイエ=コルが作ったオルガンと相性のいい基音中心で行い、ひとつひとつ語りかけるような、悩みを抱えた人間の心に迫る楽曲を作っています。黙々と書き続けられた作品群は無理解な批判に晒され、生前に喝采を浴びることはなかった。しかし、薄暗いオルガン席で、霊感の赴くままに即興演奏する彼は至福に満たされていた。〝音楽における聖フランチェスコ〟と讃えられたフランクが背負った孤高は、やがてフランス音楽史に刻まれ、近代音楽の礎となった。
1890年7月のことである。セザール・フランクが乗車していた辻馬車が馬引き列車と衝突事故を起こした。頭に損傷を受けた彼は一時意識不明になる。後遺症が見られなかったため、この事故を重要視しなかった。しかしながら次第に歩行が苦痛になり始め、気が付くと彼は演奏会やリハーサルを休まなくてはならない状態になった。さらに音楽院での講義もできなくなり、急いで休暇を取った。1890年8月〜9月に書き上げられた「3つのコラール」は、バッハを意識したフランクが自作したコラールで、この作品はバッハ以来のオルガンの名曲と称されるオルガン音楽史における珠玉の逸品だといわれています。「コラール第1番ホ長調」は、フランクらしい、美しいけれどせつない主題から始まり、バッハを思わせるオクターブストップを使った多声和音が突然出てきて、驚かされます。フランクがカヴァイエ=コルの手による〝シンフォニック・オルガン〟で真の音楽を追求する魅力に取り憑かれた頃、フランツ・リストは55歳で一転、聖職者になり、宗教音楽を多く手掛けるようになりました。パイプオルガンのために作曲された、《コラール『アド・ノス・アド・サルタレム・ウンダム』による幻想曲とフーガ》もその一つです。リストはカトリックですので、ルターの宗教改革に基づくものではなく、バッハのコラール作品と比較できるものではないですが、伝統的形式、様式は継承しつつ、その音楽性は、ロマン派です。オルガン独奏曲の中でも最大規模の作品で、実質8小節の単一主題をもとに約30分、全三部の音楽を作り出す、主題変容の一つの極致のような作品です。主題となるのはマイアベーアのオペラ「預言者(Le prophète)」の第1幕、3人のアナバプティスト(再洗礼派)が登場して農民たちをオルグしていく場面で歌うラテン語の聖歌です。彼らを含むアナバプティストたちは主人公のジャンを(偽)預言者にいただいて貴族へ反乱を起こす、劇の中でも重要な役割を担っていますが、彼らが善良な存在ではないことを思い起こさせる重苦しい主題から始まる。ほとんど調性が安定することなくひたすらに転調と不協和音を多用した主題の変容を続けていきます。高らかなファンファーレも登場し、やがて、ピアノ曲でおなじみの『愛の夢』を思わせる、ここまでの激しい展開とはまったく性格の異なる、天国的な響きを聴かせます。甘いアルペジオは最終的に変イ長調の和音で断ち切られ、最後のフーガは、コラールのテーマが、リズミカルに処理されていく、聴く者に期待を持たせ、弾くものを絶望に陥れます。転調を繰り返し、遠く離れた嬰へ短調で573小節からのクライマックスを築くと、嬰へ長調となって第一部のファンファーレ楽想が登場し、早いパッセージが途切れることなく、切迫感の中で展開していきます。ハ短調に嬰へ長調やロ長調が対置され、調の対立は激化します。コーダでは待ちに待ったハ長調、再強奏で主題が登場。大詰めはドミナントを通らずサブドミナント方面に響きが振れて、プラガル終止で荘厳に曲を閉じます。これはリストが本格的にフーガを作品へ取り入れた最初の例ですが、不協和音程が頻発する型破りな書き方で、こうしたリストのフーガの捉え方は、若い頃に教えを受けたアントワーヌ・ライヒャも型破りな考え方の作曲家だった影響を受けたのではないかと指摘されています。ピアノ曲とは一味違うリストのオルガン曲でも、ロマン派の巨匠ならではの大傑作です。
  • Record Karte
  • Organ – Jane Parker-Smith, Engineer – Michael Sheady, Producer – John Willan, Recorded At – St. Francis De Sales Church, Philadelphia
  • GB EMI ASD3994 ジェーン・パーカー=スミス リスト・幻…
  • GB EMI ASD3994 ジェーン・パーカー=スミス リスト・幻…
Romantic & Virtuoso Works
Jane Parker Smith
Avie
2007-12-18