34-22295

商品番号 34-22295

通販レコード→英ホワイト・アンド・ブラック・スタンプ・ドッグ黒文字白縁取り盤[オリジナル]

イタリア的なものの志向。 ―  パーヴォ・ベルグルンドの指揮は得意とするシベリウスの演奏と同じように、ポール・トルトゥリエを独奏に迎えた20世紀のチェロ協奏曲の伴奏でも透徹した演奏です。ざっと500年続いて絶えていない〝ドイツ音楽〟はベートーヴェンからブラームスを中心に、そこにはシューマン。前後にはバッハやブルックナーまで人それぞれに名前が浮かぶと思います。それに対して、ウォルトンをはじめイギリスの音楽とは20世紀の音楽です。パーセル以来、長らく自国産の作曲家を生み出さなかったため、イギリス音楽は最初にシベリウスの音楽に親近を示し、ウォルトンをはじめ作曲家たちも、その成果を摂取したのでした。民族的なものを昇華することと、表現主義の時代でもあった20世紀にあって、遅れて来た作曲者の輩出は、表現主義的なものの反動でもあった新古典、そして、イギリス紳士らしく微温な保守性が垣間見える作品となりました。また、イギリスとシベリウス録音は縁があり、ベルグルンドの最初のシベリウス交響の全集はイギリスのボーンマス交響楽団との間に為されています。20世紀は情報の時代で、戦争中の国民心理をラジオ放送が扇動した。そして、レコードによって全ヨーロッパに広まったのがイギリス、北欧音楽といえるでしょう。決して、弦楽器の奏法に精通していなかったウォルトンですが、残された協奏作品であるヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの3つの協奏曲は広く知られています。3曲ともに、要求されるものは高いのに対し、技巧を喧伝するタイプの曲種ではありません。《チェロ協奏曲》はトルトゥリエの演奏で。20世紀の音楽。それも昭和でいえば昭和30年代初頭の作品。第1楽章は穏やかなモデラートのテンポにのって長調とも短調とも確定せず、そして不安と安息のはざ間を行き来するように現代的な抒情を感じさせる旋律をチェロが歌う。第2楽章はテンポを上げたスケルツォ。何かの現代チェロ協奏曲のフィナーレだ、と言われればそうかなと思うような緊張に満ちた曲想が続く。打楽器やハープも活躍するオーケストレーションも巧みで緊張と推進力が漲っていて素晴らしい効果を上げている。終楽章は変奏曲形式。冒頭チェロの息の長いフレーズで主題が奏される。ここでもヴィブラフォン、シロフォン、チェレスタ、ハープなどの響きに彩られたオーケストラのパーカッション・パートの響きが美しい。トルトゥリエのチェロの魅力を知るにはこうした曲を選ぶといい。技巧的には彼より完璧な弾き手はいるだろうが、音の味付けも自由自在であったとしても、ややひんやりとした感触ながら深い抒情をたたえた旋律を美しく歌うことについていえば、人間性の深みが伝わってくるトルトゥリエの弾きぶりは文句なし。1990年にチェロにもたれかかったまま逝去したという孤高のチェリスト、トルトゥリエ。ピエール・フルニエ、アンドレ・ナヴァラ、モーリス・ジャンドロンらと共にフランス・チェロ楽派の代表的存在とされるトルトゥリエはモンテカルロ歌劇場管弦楽団、ボストン交響楽団、パリ音楽院管弦楽団のチェロ首席を歴任した後、1947年にソロ活動を開始。その間、作曲家としても活動。更に1950年代半ばからは指揮者や教育者としても活躍。彼はジャクリーヌ・デュ=プレの師としても知られている。そのトルトゥリエ、当時の多くのチェリストがそうであった様に、〝神様〟パブロ・カザルスを尊敬し、その影響を大きく受けているが、芯の太い音色で、それに伴う音色、表現の微妙な変化、自然とトルトゥリエの世界に誘われます。一方、ショスタコーヴィチの《チェロ協奏曲第1番変ホ長調 Op.107》はダヴィッド・オイストラフの独奏、マクシム・ショスタコーヴィチ指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団での「ヴァイオリン協奏曲」との組み合わせでも出ています。トルトゥリエが思う存分、音楽に入れ込んで、オーケストラの前で暴れ尽くしてているような。トルトゥリエのヴィルトゥオーゾぶりが遺憾なく発揮された一枚。共産党体制に抑圧された才能と大衆の精神世界を描く、生き延びようとする人間の性の滑稽さも、一党独裁下の諦めも希望も、などなどを演奏に込めて展開している。鐘の音は抑圧された音色で、トルトゥリエのソロだけが作り上げた音楽世界でなく、指揮者との共感、それに見事に答えているボーンマス響の響きは素晴らしく、最終楽章の管の音は、厳寒の夜の鳥の鳴き声のようです。眼前にチェロがあり、オーケストラがあるかのような。強奏時の音の実在感が圧倒的。打楽器の実在感も素晴らしい。ティンバニの皮のふるえが見えるような。管楽器群の輝かしさ。オール・アナログ・プロセスの醍醐味で魅了する。音場の奥深さも限りなし。TASリスト掲載オーディオファイル盤。
関連記事とスポンサーリンク
  • Record Karte
  • 1973年1月7,8日、サザンプトン録音
  • GB EMI ASD2924 トルトゥリエ ウォルトン/ショスタコー…
  • GB EMI ASD2924 トルトゥリエ ウォルトン/ショスタコー…
ザ・ヴェリー・ベスト・オブ
トルトゥリエ(ポール)
ワーナーミュージック・ジャパン
2014-07-09

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。