34-21404

商品番号 34-21404

通販レコード→英ホワイト・アンド・ブラック・ドッグ盤

華麗ではないが、多様をきわめるテクニック。 ― 聴きやすい柔和な流れが印象的なモーツァルト。若き日のバレンボイムは、何と純粋無垢なモーツァルトの表情を見せてくれるのだろうか。ピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタ双方の全集を完成させるなど、モーツァルトに格別の愛情を寄せるバレンボイム。小粋な《第21番》、最晩年の透明な境地が描かれる《第27番》を組み合わせた本盤でも、その絶妙なピアニズムは冴え渡っています。弾き振りをしているバレンボイムは、自らの音楽づくりを明らかに示したうえで、厳格というよりもソフトなムードで包みこんでいる。イギリスの室内管弦楽団も素直に反応し、爽やかな響きを作っている。モーツァルトの音楽の素晴らしさをダイレクトに味わうことができる。まさに、至福のひとときだ。ダニエル・バレンボイムはアルゼンチンというスペイン語圏から出て、コスモポリタンとなり、大ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインからも強い影響を受けたピアニストです。1942年、ブエノスアイレスでロシア系ユダヤ人の家系に生まれる。ビートルズと同世代で、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーのシューベルト《グレート交響曲》の各楽章が片面に収まったレコードが登場して話題になっている。彼こそロックとLPレコード時代の演奏家だ。7歳でピアニストとしてデビューしたバレンボイムの演奏を聴いた指揮者、イーゴリ・マルケヴィッチは『ピアノの腕は素晴らしいが、弾き方は指揮者の素質を示している』と看破。1952年、一家はイスラエルへ移住するが、その途上ザルツブルクに滞在しフルトヴェングラーから紹介状〝バレンボイムの登場は事件だ〟をもらう。エドウィン・フィッシャーのモーツァルト弾き振りに感銘し、オーケストラを掌握するため指揮を学ぶようアドヴァイスされた。1965年、イギリス室内管弦楽団とのモーツァルトの弾き振りのモーツァルト全曲演奏で評価を確立。ここでは指揮も兼ねるバレンボイムですが、モーツァルトの協奏曲に関してはこれが最適のセッティングと言えるほど、オーケストラとピアノが有機的に結びついています。一筋縄では行かない強かな20歳代の若き姿には、「若い瑞々しさ」だけでは片付けられない、演奏家としての「色気」がいい意味でも悪い意味でもある。ピアニストとしても指揮者としても超一流であるバレンボイム実力の証が、1960年代後半から1970年代前半にかけてイギリス室内管と、モーツァルトのピアノ協奏曲と交響曲選集を録っていた、この若き日の清澄な音楽に示されています。《第21番》は粘っこいリズムとアクセントをつけたオーケストラの序奏に、ピアノも大きくテンポが動きロマンチックなカデンツァで応える、割りと表情をつけた第1楽章から印象的。第2楽章もアクセントをつけながら少し重たい感じで冗長さを感じるが、バレンボイムの演奏の特色として顕著なのはテンポだ。アンダンテがアダージョに思えるほど引き伸ばされる。悪く言えば間延びしている。そのドイツ的重厚さが、単調で愚鈍な印象に映るのだ。その表面的でない血の気の多さ、その反動のように終楽章の破綻を恐れない思い切りの良さ。緊迫感のようなものが伝わってくる背筋にぞっとくるような迫力があります。ここでも、メリハリつけた最終楽章ではカデンツァの繊細さが素晴らしいです。《第27番》は第1楽章を室内管弦楽団伴奏の特徴をよく出して、なだらかにスタートさせますが決して典雅という程ではありません。中間楽章はゆっくり運ばれ曲想そのものからもムード調が強く感じられるほど。最終楽章は陰影感は乏しいものの、穏やかで大きな表情がついたカデンツァとのコントラストは思い切りが良い。若き日のバレンボイムの情感豊かでメリハリとパンチの効いたピアノ、透明感のある響きが美しく、すっきりとした仕上がりとなっている。
ユダヤ系の生まれとして過去微妙な発言をしている、ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim, 1942年11月15日ブエノスアイレス生まれ)は演奏家である前に、独自の音楽観を持った音楽家であり、楽想そのものの流れを掴むことのできる稀有な才能の持ち主であろう。テンポの揺れは殆ど無く、凪の中で静かに時間が進み、色彩が移り変わっていく。全体的には厚めの暖かみのある音色で、煌めき度は高くなく沈んだ暖色系の色がしている。ピアニストからスタートして、もともとヴィルヘルム・フルトヴェングラーに私淑していたこともあり、さらにズービン・メータ、クラウディオ・アバド、ピンカス・ズッカーマンなどとともに学びあった間柄で、指揮者志向は若い時からあったバレンボイム。ピアニスティックな表現も大切なことだとは思いますが、彼の凄さはその反対にある、音楽的普遍性を表現できることにあるのではないか。『近年の教育と作曲からはハーモニーの概念が欠落し、テンポについての誤解が蔓延している。スコア上のメトロノーム指示はアイディアであり演奏速度を命じるものではない。』と警鐘し、『スピノザ、アリストテレスなど、音楽以外の書物は思考を深めてくれる』と奨めている。パリ管弦楽団音楽監督時代、ドイツ・グラモフォンに録音したラヴェルとドビュッシーは評価が高い。シュターツカペレ・ベルリンとベートーヴェンの交響曲全集を、シカゴ交響楽団とブラームスの交響曲全集を、シカゴ響及びベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とブルックナーの交響曲全集を2種、それぞれ完成させている。若い時のレコードでも変わらないところですが、ピアニストとしてより指揮者として顕著さが出る、この時期のレコードで特に表出している、このロマンティックな演奏にこそバレンボイムを聴く面白さがあるのです。「トリスタンを振らせたらダニエルが一番だよ」とメータが賞賛しているが、東洋人である日本人もうねる色気を感じるはずだろう。だが、どうも日本人がクラシック音楽を聞く時にはドイツ的な演奏への純血主義的観念と偏見が邪魔をしているように思える。
近年、クラシック音楽の新録はダウンロード配信だけのケースが増え、往年の大演奏家たちの活動の把握が難しいが2014年から新たな「エルガー・プロジェクト」をシュターツカペレ・ベルリンとスタートしている。ダニエル・バレンボイムは言うまでもなく現代を代表する指揮者であり、また長らく一流のピアニストであり続けている。バレンボイムはもちろんワーグナーのオペラを中核レパートリーとしているが、そのワーグナーに心酔し、でもオペラではなく巨大な交響曲を書いたブルックナーも彼の大事なレパートリーだ。シュターツカペレ・ベルリンとの3度目のブルックナー・交響曲全集が進行中と、短期間に膨大な演奏や録音を熟すことでも知られる。市場が縮小した今日においても、定期的に新譜を出せる数少ない指揮者である。
  • Record Karte
  • 1968年、ステレオ・セッション録音。1969年初発。
GB EMI ASD2465 バレンボイム モーツァルト・ピアノ協奏…
GB EMI ASD2465 バレンボイム モーツァルト・ピアノ協奏…
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番&第27番
バレンボイム(ダニエル)
ワーナーミュージック・ジャパン
2015-07-22