34-19745
通販レコード→ナローバンド ED4盤

GB DECCA SXL6571 ゲオルク・ショルティ ベルリオーズ・幻想交響曲

商品番号 34-19745
わたしも考えが変わったの。そして、それって大切なことだと思うの。》 破竹の勢いだった壮年期のショルティと運動機能抜群のシカゴ交響楽団のコンビが放つ音響の輝きが、そのままレコードに詰まっている。アメリカで74年グラミー賞を受賞したことからも伺えるが、この曲が大好きなわたしとしてならフランス的ではない、情緒不足だとの批判はできるが、ここまで徹底されると、これもまた筋の通った凄い演奏である。両肘をグイグイ動かしているショルティの指揮姿が見えるようだ。録音はイリノイ大学クラナートセンターでのセッション。ホールトーンは適切だが、直接音がまず耳に届く、当時のデッカらしいマルチ・マイクの効果が活きた、各楽器の動きが鮮明にピックアップされている。名技集団シカゴ交響楽団の強靭な音を強調するような録音。ドラマティックな山場を各所に少しずつ作り上げる聴かせ上手な演奏と言えそうです。各楽器のソロも見事ですが、名手ジェイコブの吹く「怒りの日」のチューバには圧倒されました。明るい音色を活かして、弦楽器が幾重にも重なるハーモニーが美しい演奏だ。標題音楽の扉を開いたのはベートーヴェンの《田園交響曲》で、そこにライトモチーフを持ち込んで寄りストーリー性を交響曲の形式で結実したのがベルリオーズの偉業だと、わたしは度々書いたり、解説してきた。しかし、ショルティがこの作品を、標題音楽としてロマンティックに主観的な解釈に基づき演奏するのでなく、標題性を認めつつ古典交響曲の構成・形式を残した本盤に、どうかな、と肩を叩かれた気がする。ベルリオーズはリストと共同生活もしていたからだが、ショパンとも親交があったのも確かなこと。フランス特有の楽器を管弦作品に使用したベルリオーズから一面しか見ていなかったのかもしれない。天橋立を覗くようにして見れば、古典交響曲のスタイルをフランスだからこその響きで為したかったのではないか。第1楽章の導入部に続くアレグロの「固定観念」と呼ばれる主題を楽譜どおり忠実に反復演奏していることにも言える。第2楽章の舞踏会の音楽や、第3楽章の野の風景の音楽などが楽しい。怪奇な標題性は後退し、旋律の美しさ、リズムの軽やかさなど、古典的とさえいえるようなチャーミングな魅力にあふれた音楽になっている。ピリオド楽器の時代になって《エロイカ》に纏わりついていたガウンを脱がせて、その見事なカーヴを楽しめる現代なのだもの。ビキニやへそ出しが普段着の現代。あの娘らが、おヘソを出してストリートを闊歩しているのも五年か、十年だろう。エキゾティックでも、エロティックでもなく、それを現代は受け入れる社会になったということだ。そして、身体にピッタリとしたスーツを着て、生涯を終わりもしない。これも人生の味わいだ。
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