34-19455
通販レコード→ED2盤

GB DECCA SXL2178 バックハウス&イッセルシュテット ベートーヴェン・ピアノ協奏曲1&2番

商品番号 34-19455


夏目漱石が、明治34年ロンドンに留学していた時にバックハウスを聴いている。その時のお目当てはイタリア人歌手、アデリーナ・パッティの独唱会だったのでピアノについての言及はない。この時、グリーグとリストの小品を弾いているが夏目漱石の耳にはどう聴こえたのだろう。鍵盤の獅子王と異名をとる日本でとりわけ人気の高いピアニスト、バックハウスによるベートーベンの協奏曲。バックハウスのピアノは言い尽くされている通り、特徴が無いのが特徴といえるでしょうか。要は、テクニックをひけらかすわけでもなく、その澄んだ音色ともあいまって、ひどくシンプルなのです。でも、繰り返し聞いていると何か、そのピアノが、まるで、融通無碍の境地で、自由にベートーベンの音符と戯れているように、静かな所は静かに、激しいところは激しく聴こえて来るところが、彼の魅力と言えるでしょうか。このバックハウスを土台からしっかり支えているのが、壮年期で充実しかけたイッセルシュテット。テンポも速く、劇的な演出はどこにもないが、曲が進むに連れて熱気を帯びてくる。ベートーヴェンの若さが溢れているし、ベートーヴェンがその当時足場を固めていた煌びやかな社交界の雰囲気も醸し出しているとも思う。お互いに晩年に差し掛かり枯れた境地が伝わって参ります。イッセルシュテットの解釈であろうが、ウィーンフィルの奏者達のバックハウスへの献身こそが活気を呼び起こしているのかもしれないと常々思います。この巨匠にとって最後のベートーヴェン協奏曲全集になるであろうことを指揮者もオーケストラも噛みしめて、最高のサポートをしています。英 Decca の録音は、バックハウスとウィーン・フィルのもっともよい響きの勘所を熟知、音圧が高く、音に密度と力がある。高域の空間と伸びは適度。低域は空間が広く、密度のある音。チェロをはじめとする弦楽器も温かい音色で、高低の分離も良いアコースティックな響きを伴って迫ってくる。バックハウス晩年のステレオ録音による比類なく美しい名演です。
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