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Hobは何を表しているの ― 交響曲の父、そして弦楽四重奏曲の父と呼ばれるフランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品のいくつかの楽曲には作品番号〝Op.〟が付いていますが、付いていないものも多く、それに未完だったり断片だけ、あるいは紛失したものもあり、はたまた疑作や偽作などが混在していて、長い間混乱と議論が絶えませんでした。生涯の大半はエステルハージ家に仕えていて、そのために作られた曲もかなりあり、1780年(48歳)ごろにはエステルハージ家の外でもハイドンの人気は上がり、ウィーンのアルタリア社やロンドンのフォースター社などと契約を結んで楽譜を出版するようになって作品番号がつけられています。モーツァルトが自らカタログを作って自作品を売り込んでいたのは、映画「アマデウス」の一場面にある通りですが、モーツァルトの作品目録である「モーツァルト全音楽作品年代別主題目録」のように、ハイドン作品は作曲、もしくは出版順に作品を整理・統合することは断念せざるを得ませんでした。しかし、ホーボーケンは「器楽」と「声楽」にグループ分けすることから目録作りをスタートしました。アントニー・ヴァン・ホーボーケンは楽譜の熱心なコレクターとしても知られ、ヨハン・ゼバスティアン・バッハやブラームスの初期の版を数多く集め、その数5,000点以上ともいわれています。ホーボーケンによる『ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録』は全3巻にわかれています。『第1巻:20のグループの器楽曲』、『第2巻:11のグループの声楽曲、ハイドン編曲によるスコットランドとウェールズの民謡』、『第3巻:索引、補遺、正誤表』で、最初の第1巻「器楽曲編」は1957年に発表され、残りが1971年と1978年にそれぞれ発表され完成しました。器楽曲編と声楽曲編はさらに細かくジャンル分けされていて、ローマ数字がIからXXXIまでふられています。交響曲(108曲)と弦楽四重奏曲(83曲)でも数が多く、父と呼ばれるハイドンのバリトンやピアノを中心にした二重奏、三重奏の多様さ、その数およそ 220曲。本盤は、Hob.XVに分類された〝ピアノとヴァイオリンまたはフルート、チェロのための三重奏曲〟。Hob.XV:15,16,17の3曲は、1790年にロンドンのブラント社から出版されています。他の作品と異なっている点は、ヴァイオリンではなく、フルートが指定されていることです。しかし、ヴァイオリンで代用しても可能とわざわざ明記されています。曲調を見る限り、フルートでなければならない必然性は感じませんので、フルートというのは出版社側の要求であり、ハイドン自身は、若干の奏法上の相違点以外の部分では、ヴァイオリンとほとんど区別することなく書いているように思われます。そこで、一流のヴァイオリン奏法を間近にしてきたウォルフガング・シュルツの演奏は格別。曲自体の面白さは、このウィーン・フルート・トリオ盤に軍配が上がるでしょう。シュルツは1970年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に入団してから、2011年に退団するまで、首席フルート奏者として活躍し、室内楽の演奏も数多く、ウィーン・フィルの様々な録音で色彩感溢れる豊穣な音色を聴かせてきました。シュルツのレパートリーは、バロックから現代作品までと幅広く、ヘルベルト・フォン・カラヤン、クラウディオ・アバド、ロリン・マゼール、ズービン・メータ、小澤征爾やアンドレ・プレヴィンらの録音で聴こえてくる。特にオーストリアの現代作曲家の作品の演奏に力を注ぎ、多くの作品が彼に献呈された。レコーディングも多く、著名な賞を受賞している録音も数多い。ヴァイオリンのゲルハルト・シュルツはウォルフガングの兄でアルバンベルク四重奏団の第2ヴァイオリンとして知られている。丹念に探さないと出会えないレコードですが、この曲集のオーソドックスな名演としてお薦めしたい。
第2次世界大戦の潜水艦技術が録音技術に貢献して、レコード好きを増やした。繰り返し再生をしてもノイズのないレコードはステレオへ。ステレオ録音黎明期1958年から、FFSS(Full Frequency Stereo Sound)と呼ばれる先進技術を武器にアナログ盤時代の高音質録音の代名詞的存在として君臨しつづけた英国DECCAレーベル。レコードのステレオ録音は、英国DECCAが先頭を走っていた。1958年より始まったステレオ・レコードのカッティングは、世界初のハーフ・スピードカッティング。 この技術は1968年ノイマンSX-68を導入するまで続けられた。英DECCAは、1941年頃に開発した高音質録音ffrrの技術を用いて、1945年には高音質SPレコードを、1949年には高音質LPレコードを発表した。その高音質の素晴らしさはあっという間に、オーディオ・マニアや音楽愛好家を虜にしてしまった。その後、1950年頃から、欧米ではテープによるステレオ録音熱が高まり、英DECCAはLP・EPにて一本溝のステレオレコードを制作、発売するプロジェクトをエンジニア、アーサー・ハディーが1952年頃から立ち上げ、1953年にはロイ・ウォーレスがディスク・カッターを使った同社初のステレオ実験録音をマントヴァーニ楽団のレコーディングで試み、1954年にはテープによるステレオの実用化試験録音を開始。この時にスタジオにセッティングされたのが、エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏によるリムスキー=コルサコフの交響曲第2番「アンタール」。その第1楽章のリハーサルにてステレオの試験録音を行う。アンセルメがそのプレイバックを聞き、「文句なし。まるで自分が指揮台に立っているようだ。」の一声で、5月13日の実用化試験録音の開始が決定する。この日から行われた同ホールでの録音セッションは、最低でもLP3枚分の録音が同月28日まで続いた。そしてついに1958年7月に、同社初のステレオレコードを発売。その際に、高音質ステレオ録音レコードのネーミングとしてffss(Full Frequency Stereophonic Sound)が使われた。以来、数多くの優秀なステレオ録音のレコードを発売し、「ステレオはロンドン」というイメージを決定づけた。
  • Record Karte
  • DECCAの廉価盤は1960年代初頭より少し前にモノラルのAce of Clubsではじまり、1965年頃からはステレオ録音をAce of Diamondsレーベル(SDDナンバー)として再発売していきます。初回発売SDD101はエルネスト・アンセルメ指揮のベートーヴェン交響曲1・8番。SDD100番台まではレーベルが大きく上部にFull Frequency Range Recordingという表示があります。これらは盤質もワイドバンドと同様なだけでなく、ほとんどの場合ワイドバンドで使われた金属原盤を流用してプレスされているので大レーベルで溝ありと溝なしがあり、音質的にワイドバンドに匹敵するものになっています。殊更に高価なSXL2000番台の再発にあたるものはコレクターズアイテムです。1970年代に入るとSDDシリーズのレーベルも小さくなり、デザインも微妙に変化しています。オリジナルのSXLと別編集のリカッティングになっているものも多く、盤質も低下していてコレクション的な価値は下がります。1976年10月ウィーン、ゾフィエンザールでのクリストファー・レイバーン(プロデュース)、スタンリー・グッダール(エンジニア)による録音。
  • GB DEC SDD521 シュルツ&ドイチュ&リト…
  • GB DEC SDD521 シュルツ&ドイチュ&リト…
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲/協奏交響曲
シュルツ(ボルフガング)
ポリドール
1998-12-09