先生、クラシックを聴き始める人にオススメの曲は何ですか? ― 問うてきた彼は名盤に興味を持っており、わたしがカラヤン党で、モーツァルト好きだと承知している。「それならモーツァルトの協奏交響曲だ。あれは大傑作だよ、是非聴いて欲しい」、この協奏交響曲はモーツァルトの魅力の宝庫なのだ。モーツァルトはマンハイムとパリへの旅行からザルツブルグに帰郷し、当時マンハイムで流行していた〝協奏交響曲〟を2曲書いています。弦楽器や管楽器の複数の独奏楽器がオーケストラと協奏するので、公開演奏会の曲目としてきわめて人気の高いジャンルであったようです。しかしモーツァルトが完成させた協奏交響曲は唯一、このヴァイオリンとヴィオラのための曲だけでした。もう一つの管のための協奏交響曲は公開演奏会のために作曲はしたけれど、なぜか演奏されないまま自筆譜も失われてしまったそうです。その後、19世紀後半になり一曲の協奏交響曲の筆写譜が見つかって、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルンのためのK.297bが失われたモーツァルトの曲に違いないとされていたのは1960年代ですが、その真偽についてはまだ結論がでていないようですね。さて、このモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための〝協奏交響曲〟にハイドンの〝協奏交響曲〟をカップリングした珍しい組み合わせは、ACE OF DIAMONDS独自企画盤です。オリジナル〝SXL6088〟はレコード芸術「新編名曲名盤300」掲載、イーゴリ・オイストラフのヴァイオリンとダヴィッド・オイストラフのヴィオラの美音を完璧に捉え切った、この曲随一の優秀録音盤として知られます。これはACE OF DIAMONDS盤ならではのコストパフォーマンスと高音質。ダヴィッドは安定した技巧と豊麗な響きのヴァイオリンで、誠実に音楽を歌うのが特徴です。それにしてもイーゴリのヴァイオリンが本当に素晴らしい優雅に演奏される低音の効いたバックのオーケストラに浮かび上がるクリアなヴァイオリンとヴィオラの音はこの盤の聴き所のひとつです。息子のイーゴリも名ヴァイオリニスト、父親ダヴィドがヴィオラを弾き、息子を暖かく見守ってフォローしている。先入観なく聞いてみられることをお勧めします。父親がヴィオラを担当した親子共演ですから、ふたりの息はぴったりとあって微笑ましく、オーケストラと2つのソロ楽器が一分の隙もなくがっちりとしています。健康的で線の太い重厚なモーツァルトに仕上がっています。→コンディション、詳細を確認する
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第2次世界大戦の潜水艦技術が録音技術に貢献して、レコード好きを増やした。繰り返し再生をしてもノイズのないレコードはステレオへ。ステレオ録音黎明期1958年から、FFSS(Full Frequency Stereo Sound)と呼ばれる先進技術を武器にアナログ盤時代の高音質録音の代名詞的存在として君臨しつづけた英国DECCAレーベル。レコードのステレオ録音は、英国DECCAが先頭を走っていた。1958年より始まったステレオ・レコードのカッティングは、世界初のハーフ・スピードカッティング。 この技術は1968年ノイマンSX-68を導入するまで続けられた。英DECCAは、1941年頃に開発した高音質録音ffrrの技術を用いて、1945年には高音質SPレコードを、1949年には高音質LPレコードを発表した。その高音質の素晴らしさはあっという間に、オーディオ・マニアや音楽愛好家を虜にしてしまった。その後、1950年頃から、欧米ではテープによるステレオ録音熱が高まり、英DECCAはLP・EPにて一本溝のステレオレコードを制作、発売するプロジェクトをエンジニア、アーサー・ハディーが1952年頃から立ち上げ、1953年にはロイ・ウォーレスがディスク・カッターを使った同社初のステレオ実験録音をマントヴァーニ楽団のレコーディングで試み、1954年にはテープによるステレオの実用化試験録音を開始。この時にスタジオにセッティングされたのが、エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏によるリムスキー=コルサコフの交響曲第2番「アンタール」。その第1楽章のリハーサルにてステレオの試験録音を行う。アンセルメがそのプレイバックを聞き、「文句なし。まるで自分が指揮台に立っているようだ。」の一声で、5月13日の実用化試験録音の開始が決定する。この日から行われた同ホールでの録音セッションは、最低でもLP3枚分の録音が同月28日まで続いた。そしてついに1958年7月に、同社初のステレオレコードを発売。その際に、高音質ステレオ録音レコードのネーミングとしてffss(Full Frequency Stereophonic Sound)が使われた。以来、数多くの優秀なステレオ録音のレコードを発売し、「ステレオはロンドン」というイメージを決定づけた。
- Record Karte
- モーツァルトは1963年録音。英国DECCAの廉価盤は1960年代初頭より少し前にモノラルのAce of Clubsではじまり、1965年頃からはステレオ録音をAce of Diamondsレーベル(SDDナンバー)として再発売していきます。初回発売SDD101はエルネスト・アンセルメ指揮のベートーヴェン交響曲1・8番。SDD100番台まではレーベルが大きく上部にFull Frequency Range Recordingという表示があります。これらは盤質もワイドバンドと同様なだけでなく、ほとんどの場合ワイドバンドで使われた金属原盤を流用してプレスされているので大レーベルで溝ありと溝なしがあり、音質的にワイドバンドに匹敵するものになっています。殊更に高価なSXL2000番台の再発にあたるものはコレクターズアイテムです。1970年代に入るとSDDシリーズのレーベルも小さくなり、デザインも微妙に変化しています。オリジナルのSXLと別編集のリカッティングになっているものも多く、盤質も低下していてコレクション的な価値は下がります。
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