34-5711

商品番号 34-5711

通販レコード→英ダーク・ブルー金文字盤

人生のすべてが肯定できる人。 ― 晦渋で、とっつきにくい作品については、根気よく聴き続けることで、ある日ある時、突然腑に落ちるときが訪れる。《ロ短調ミサ曲》はヨハン・ゼバスチャン・バッハの若いときの作品から晩年に至るまでのパロディからなっている。人生を振り返ったときのそれぞれの時点でのスナップショットを、そのまま並べただけのものではなく、考え尽くしたバランスと磨き上げられた細部の仕上げをしたポートフォリオとでも言えましょうか。若いときに作ったものだからと焼き捨てることなどないどころか、20歳代のときに作った曲にも愛着をおぼえ、まるでこのために新たに書かれたかのように見事に再利用している。おそらく一切の後悔のない、人生のすべてが肯定できると確信できる人だったのだろう。悲しみも怒りも、喜びも楽しみも、すべては不足なく、必然であるということだ。ヘルベルト・フォン・カラヤンの《ロ短調ミサ曲》は美しい。そして、熱い。エリーザベト・シュヴァルツコップ、マルガ・ヘフゲン、ニコライ・ゲッダ、ハインツ・レーフスをソリストに起用した名演の誉れが高いカラヤンの1952年録音の《ロ短調ミサ曲》。シュワルツコップとヘンゲンの二重唱も美しい。シュワルツコップが後年に感じる独特の癖がなく、とても素朴だ。この頃のゲッダも、意外と明朗で優しい声に慈愛を感じる。レーフスは四重唱の奥の支えとしての存在感がある。合唱も無理に声を張り上げる事もないので、とてもバランスが良い。カール・リヒターやオットー・クレンペラーで同曲を聴いた時のような神々しい程の荘厳さはないので、強烈な印象なんぞ何もない。この辺に当時の巨匠のバランス感覚を知る事となるのだが、徐々に音楽が温まって行くので、それなりの緊張感はある。この録音はオーケストラの表記が以前から曖昧な部分があったため一部に混乱があり、最新の調査でウィーン交響楽団と特定されています。〝The Chorus And Orchestra Of The Society Of The Friends Of Music〟がウィーン楽友協会のオーケストラ=ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と解釈されてきたためでしょう。ウィーン響とするわけも行かなかっただろう理由として、フィルハーモニア管弦楽団黄金時代の主席奏者、マノウグ・パリキアン(ヴァイオリン)、デニス・ブレイン(ホルン)、ガレス・モリス(フルート)、シドニー・ザットクリフ(オーボエ・ダ・モーレ)、ペーター・ニューベリー(オーボエ・ダ・モーレ)が参加している点も魅力です。カラヤンとウォルター・レッグの録音に挑むに当たっての入れ込みようが興味深い。ウィーン・フィルの演奏であれば独特のウィーン奏法が聞かれなければならず、ピッチの問題もあるので簡単なものではない。それでマニアは「シンフォニカの方かな?」との仮説を建てたが、ウィーン響の中にフィルハーモニア管の首席奏者が混ざって演奏することは考えにくい。カラヤンはこの録音のために70回以上にも及ぶリハーサルをおこない万全を期したのですが、録音当日になってカラヤン自身が敗血症で倒れ、多忙ゆえスケジュールの延期が出きず病をおして録音を敢行、指揮台に運んだ病床に横たわりながら指揮したとされています。要するに、スケジュール通りにウィーン響とムジークフェラインザールでセッションをはじめて、ロンドンでフィルハーモニア管を起用して続けられたわけだ。ウィーン・フィルではなく、ウィーン響であったことが幸いしたか、録音マジックなのか違和感を感じさせないのは見事。その御蔭なのか、この曲を聴こうと思った時には割りとターンテーブルに乗せる機会の多いレコードである。ささやかに音楽が語り掛けるので、素直に演奏に身を浸す事が出来る。「キリエ」はどきりとする程の壮絶な印象が残り、「グロリア」も活気があって宜しい。良く訓練された楽友協会合唱団の実力を堪能出来る。素直に音楽に没頭する様は感動する。「サンクトゥス」から「ホザンナ」に掛けては圧巻だ。この時代は巨匠の指揮は、流石に溌剌としている。それがいざと言う時の瞬発力なのだが、全体の構成を見つつも突進する箇所は、やはり若さが出ている。時代の要請もあるのだろうが、厚みのある濃密な浪漫薫る音楽の宝庫。虚心坦懐に耳を傾け思うのは、時間を超え古い録音から垣間見える本物の活気。「アニュスディ」も然程深刻になり過ぎない。終曲の「ドナ・ノビス・パーチェム」まで達する頃には充足感で一杯になっている。
英EMIはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で録音したモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」と「魔笛」の成果を認めて、1951年6月からウォルター・レッグのフィルハーモニア管弦楽団でヘルベルト・フォン・カラヤンのレコード制作に乗り出す。フィルハーモニア時代のカラヤンの音楽には、実に人間らしい情熱と冷静さを兼ね備えた演奏が多い。ワルター・ギーゼキングとのグリーグのピアノ協奏曲、フランクの交響的変奏曲が最初だった。続くベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲録音から、ベートーヴェンの交響曲第7番のレコーディングに移っているから、交響曲全集録音の目論見はあったと推察できる。「レオノーレ」序曲第3番、「コリオラン」序曲を挟んで、交響曲第6番「田園」となるから、交響曲との組み合わせを工夫したのだろうか、現在でも利益を支えるカラヤンになると予測できなかっただろうから、人気歌手エリーザベト・シュヴァルツコップの歌声を交響曲第5番「運命」と組み合わせている。ただし、ここに纏わるミステリーは後述するとして、英EMIの偉大なレコード・プロデューサー、レッグが目指したのは、未来の演奏会やアーティストを評価するときに基準となるようなレコードを作ること、彼の時代の最上の演奏を数多く後世に残すことであったという。レッグは戦後ナチ党員であったとして演奏を禁じられていたカラヤンの為にレッグ自ら1945年に創立したフィルハーモニア管を提供し、レコード録音で大きな成功を収めたが、これに先立つこと1947年1月ウィーンでレッグとカラヤンが偶然出会い意気投合したことで、早速9月よりウィーン・フィルとレコーディングを開始する。こうしてレコード録音で評価を広めるレッグ&カラヤン連合軍の快進撃の第一幕が開いた。英米の本当の連合軍もレッグのロビー活動により、カラヤンに公的な指揮活動が許されたのと前後している。この快進撃の第一幕が、「フィガロの結婚」でした。このウィーン・フィルとのレコーディングは、1946年から1949年まで集中的に行われている。しかし、この時期のカラヤンとウィーン・フィルの演奏が評価の高いシロモノであったことが、その後カラヤンにとっての天敵ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが亡くなった後にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン・フィルがカラヤンを迎え、帝王として君臨することになる礎となったことは事実である。まさに、カラヤン芸術の原点として評価すべき時代の録音と云えるだろう。
エリーザベト・シュヴァルツコップとのモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」は初期のステレオ録音より歌手の声がハッキリ聞こえる、より生々しい歌声に感じる円熟のモノラル録音と若きヘルベルト・フォン・カラヤンの熱気と勢いありあまる演奏は文句なく素晴らしい。それはカラヤン&レッグ&フィルハーモニア管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集が、交響曲第8番と第9番「合唱」がステレオ録音されていたことだ。しかも試験的とはいえステレオ録音にマイク・セッティングされて録音は残された。ヴィルヘルム・フルトヴェングラーのベートーヴェン・交響曲第7番の轍は踏まないと考えたのか、レコード録音の未来に積極的だったことがわかる。「疑似ステレオ」ではなく、「ステレオ録音」とありますが正しくは「モノラル・セッションで平行して撮られた試験的なバイノーラル録音」のようです。指揮者の前面にマイクを並べることでなく、カラヤンが指揮に立つ後方に、この「BINAURAL MICROFONE」がセッティングされていることから指揮者が聴いているオーケストラ・サウンドの再現をレコード録音のセールス・アピールにする目標としていたのでしょう。2017年4月の熊本地震復興一年目の記念コンサートで、指揮者無しのブラームス交響曲第1番の演奏会でティンパニとブラスが通常とは珍しい配置になっていた。これも「モノラルでふさわしいオーケストラのサウンドを得るために」行われた配置による成果と思われる。SPレコード時代の録音では、ソリストがマイクの前に入れ代わり立ち代わりして行われていた。ブルーノ・ワルターが英EMIで録音した「田園」をはじめ、対抗配置に馴染んでいたのを米コロンビアでのステレオ録音ではストコフスキー・スタイルに強制されて、初期の録音に弦楽器群と管楽器のタイミングに戸惑いが聴こえる。しかしハーモニーのバランスの良さと音の輪郭の美しさは流石カラヤンである。曲の構成が良く理解できる演奏で、力みは全くない。ウオルター・レッグと契約したばかりの40歳代後半のカラヤンの指揮は晩年のイメージとは全く異なっている。カラヤンの若々しさを感じることが出来る演奏です。ストレートな表現ですが、大きなウネリみたいなものもあり、早めのテンポで前進していく意志の強い指揮だ。録音も極めて聞きやすい。
21世紀に入り惜しまれつつ亡くなったエリーザベト・シュヴァルツコップは、様々な役柄において持ち前の名唱を余すことなく披露した。その絶頂期に残した素晴らしい完成度を誇るモーツァルト。最も得意としていたのは、その声質からしてもモーツァルトの楽曲であったと言えるのではないだろうか。オペラの録音というのは完璧なものなんて滅多にないもので、どこかに穴があるものだが、1962年に録音されたモーツァルトの歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」は指揮のカール・ベームをはじめてとして全てにわたって完璧である。フィオルディリージを歌うシュヴァルツコップの美しさ。こんな女性が相手なら、私は喜んで欺されてあげたくなる。1950年に録音されたヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団での歌劇「フィガロの結婚」などにおいても素晴らしい歌唱を披露しており、シュヴァルツコップとモーツァルトの楽曲の抜群の相性の良さを感じることが可能だ。決して綺麗な声で歌われているとは言えないのだが、どの曲もその濃厚な表情が美しい。愛らしくもあり格調高さを保つことを忘れない、この大歌手ならではの自在なものです。シュヴァルツコップは戦中にベームに認められてウィーン歌劇場でデビューを飾っているが、彼女の本格的な活動は戦後、大物プロデューサーのウォルター・レッグに見いだされ、その重要なパートナーとして数多くの録音に参加したことによる。そのレパートリーの多くはレッグが決定していたそうで、そのようなことを彼女自身が語ってもいる。シュヴァルツコップは大プロデューサーであったレッグの音楽的理想を体現した歌手の一人であったと思う。
エリーザベト・シュヴァルツコップ(Olga Maria Elisabeth Frederike Schwarzkopf)は1915年12月9日、ドイツ人の両親のもとプロイセン(現ポーランド)のヤロチン(Jarotschin, 現Jarocin)に生まれたドイツのソプラノ歌手。ベルリン音楽大学で学び始めた当初はコントラルトでしたが、のちに名教師として知られたマリア・イヴォーギュンに師事、ソプラノに転向します。1938年、ベルリンでワーグナーの舞台神聖祝典劇『パルジファル』で魔法城の花園の乙女のひとりを歌ってデビュー。1943年にウィーン国立歌劇場と契約し、コロラトゥーラ・ソプラノとして活動を始めます。第2次大戦後、のちに夫となる英コロムビア・レコードのプロデューサー、ウォルター・レッグと出会います。レッグは『セビリャの理髪師』のロジーナ役を歌うシュヴァルツコップを聴いて即座にレコーディング契約を申し出ますが、シュヴァルツコップはきちんとしたオーディションを求めたといいます。この要求に、レッグはヴォルフの歌曲『誰がお前を呼んだのか』(Wer rief dich denn)を様々な表情で繰り返し歌わせるというオーディションを一時間以上にもわたって行います。居合わせたヘルベルト・フォン・カラヤンが「あなたは余りにもサディスティックだ」とレッグに意見するほどでしたが、シュヴァルツコップは見事に応え、EMI(当時の英COLUMBIA)との専属録音契約を交わしました。以来、レッグはシュヴァルツコップのマネージャーと音楽上のパートナーとなり、1953年に二人は結婚します。カール・ベームに認められ、モーツァルトのオペラ『後宮からの誘拐』のブロントヒェンやリヒャルト・シュトラウスのオペラ『ナクソス島のアリアドネ』のツェルビネッタなどハイ・ソプラノの役を中心に活躍していましたが、レッグの勧めもあって次第にリリックなレパートリー、モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』伯爵夫人などに移行。バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭にも出演し、カラヤンやヴィルヘルム・フルトヴェングラーともしばしば共演します。1947年にはイギリスのコヴェントガーデン王立歌劇場に、1948年にはミラノ・スカラ座に、1964年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー。1952年には、リヒャルト・シュトラウスのオペラ『ばらの騎士』の元帥夫人をカラヤン指揮のスカラ座で歌い大成功を収めます。以来、この元帥夫人役はシュヴァルツコップの代表的なレパートリーとなります。オペラ歌手としてもリート歌手としても、その完璧なテクニックと、並外れて知性的な分析力を駆使した優れた歌唱を行い20世紀最高のソプラノと称賛されました。ドイツ・リートの新しい時代を招来したとまで讃えられシューマンやリヒャルト・シュトラウス、マーラーの歌曲を得意とし、中でもとりわけヴォルフの作品を得意とし、1970年代に引退するまで男声のディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウと並んで最高のヴォルフ歌いと高く評価されています。1976年にオペラの舞台から、1979年には歌曲リサイタルからも引退し、後進の指導にあたっていました。2006年8月3日、オーストリア西部のフォアアルルベルク州シュルンスの自宅で死去。享年90歳。
  • Record Karte
  • 1952年11月2-5,7日ウィーンのムジークフェラインザール、1952年11月23,28~30,53年7月16日はロンドンでの、モノラル・セッション。
  • GB COL CX1121-3 カラヤン バッハ・ロ短調ミサ
  • GB COL CX1121-3 カラヤン バッハ・ロ短調ミサ
JS Bach: Mass in B MInor
Elisabeth Schwarzkopf
Documents
2009-01-01