34-11701
商品番号 34-11701

通販レコード→仏ラージドッグ・セミサークル黒文字盤
かくも美しい内実が隠されていたのか! ― 20世紀前半から半ばにかけて活躍した、イギリスを代表したサー・トーマス・ビーチャムが得意としたロシアもの。演奏効果抜群な名曲だけに、交響組曲「シェエラザード」には古今を通して数多くの名盤がありますが、とかく外面的な効果に目が行きがちな派手なばかりで貫き通すもよし、このビーチャム盤は、これを耳にした人にとっては特別な位置を占めるに違いない名盤です。日本人が全員仏教徒ではないし、あなたは違う宗教観なのだろうか。アメリカ人が月面歩き回った時の各宗教の反応ってのがちょっと調べてみたいという声も有る。その宗教に対する姿勢が、敬虔な演奏家には大きなフィルターとなるのかな、と感じたのがこのレコードの演奏だった。かくも美しい内実が隠されていたのか!と目を瞠らせる、愛情溢れるビーチャムの指揮は見事と言うほかなく美しい演奏。スケール雄大、気品に溢れた「シェエラザード」で単純な音形の繰り返しである「波の主題」など、これだけ歌えている演奏は少ないと思いますしハープのスケールも最高音を絶妙にテヌートし、お洒落な装飾を行っています。大団円の「難破の場面」での雄大さも特筆もの。ヴァイオリンのスティーヴン・スタリックはソロでも活躍しただけあって、素晴らしいテクニックと気品に溢れた表現を披露。ステレオ初期の録音も今もって色彩鮮やかです。ビーチャムの演奏は、この作品がもっている華やかさをとことん追求したものとなって、ゆったりとしたテンポで濃厚かつ官能的なシェエラザードの世界を展開します。大富豪の家に生まれたビーチャムは、その持っていた財力をすべて大好きだった音楽に注ぎ込むことのできた幸福な人だった。彼は自身の財産を投じてオーケストラや合唱団、歌劇組織を創設したが、それが現在でも活動を続けているロンドン・フィルやロイヤル・フィル、ナショナル・オペラだ。ビーチャムは音楽を正式に学んだことは一度としてなく、全て独学だったが、それでいて、指揮者として楽員に心底尊敬され、どちらのオーケストラもイギリス屈指のオーケストラに育て上げた。ここは大事なところ。趣味の拡大ではなくて天性の音楽家が、たまたま大金持の家に生まれ、好きなだけ使えたお金を「正しく」使ったということだ。半世紀以上にわたって活動を続け、彼の「財力と指揮活動」によってイギリスに紹介された作品も数多い。いや、偉大な趣味人だったのかも。ビーチャムは職業指揮者ではないので、ビーチャムの音楽観でまとめられた録音ばかりだ。批評家が何を書こうが怖くなかったし、人気と支持を受け続ける必要などなかった。自分が育てた庭の果実を味わうだけで良かった、特別な空間で生きている大物だったから、その伸び伸びとした音楽を満喫できるんだろうな。大富豪指揮者の『わがまま』な贅沢を叶えた録音です。
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カラヤンより先駆けて初のステレオレコードとして発売され、英EMIのカタログから消えることなく50年間以上も多くのクラシック愛好家が代々忘れずに愛聴しているのですから、評価の方も高いことは証明されているでしょう。現在でも世界4番目と言われる製薬会社の御曹司に産まれたビーチャムは、やりたいことをやって生き抜いた音楽家として満足でしょう。サー・トーマス・ビーチャムは82歳まで生きた長寿だけども、このレコードの発売の翌年1960年に自分の為に創設、編成したロイヤル・オーケストラ後継者にルドルフ・ケンペを指名して引退。1961年に他界しています。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)は1946年、当時イギリス随一の指揮者であったサー・トーマス・ビーチャムによって創設されました。ロンドンの格式あるオーケストラの中でも唯一その名称に“ロイヤル”を使うことを許され、エリザベス皇太后をパトロンに持ったことを誇りとしています。ビーチャムは生涯4つのオーケストラを創設している。1906年の「The New Symphony Orchestra」、1909年の「The Beecham Symphony Orchestra」、1932年の「The London Philharmonic Orchestra」、これは現在のロンドン・フィルハーモニーとは異なるが、1946年に「The Royal Philharmonic Orchestra」を戦後英国に帰国後に組織した。現在まで続く製薬会社創業家一家の御曹司であった彼は、その類まれなる行動力と潤沢な資金を元手に気儘にオーケストラを創設し、自腹で音楽祭でのオペラ公演やコンサートをしていた。現在コンサートの前に演奏者などがプレトークと言って解説をすることもあるけれども、これもビーチャム卿が最初に始めた。その演奏は世界各地で絶賛され、独特の熟成した美しいアンサンブルにマイルドでエレガントな音色はサー・トーマス・ビーチャムの時代から変わらぬ名演に満ちています。英国音楽界を牛耳っていたとも言われるほどの存在だった怪物、サー・トーマス・ビーチャムだからこそ成し得た、満足できる音楽を自由にやりたいように演奏、録音をした。その演奏内容の多彩さには驚くべきものがあります、定評あるディリアスでは独特の空気感を伝える絶妙な美しい演奏をおこなう一方、フランス音楽やベートーヴェン、モーツァルトなどでは、ときに過激なまでの思い切った表情付けで楽想をえぐり、さらにハイドンではスケール大きく懐の深い演奏を聴かせるといった具合で、それぞれの作品に真摯に向き合う姿は実に感銘深いものがあります。また、ストコフスキーを初めとして1950年代にレコードをたくさん録音した指揮者は、楽譜にはない演奏を良くしていますけれども、ビーチャムのレコードもそういった演奏がとても多くあって新鮮に楽しむことが出来ます。レコード録音のレパートリーのスタンダードも構築したような業績もあるので、親しんでいる曲からでもビーチャムの録音盤と聴き比べるのは面白く勉強に成る事でしょう。プチ贅沢でなく、秀吉の黄金の茶釜や金箔をふんだんに使った屏風絵が圧倒するだけの金持ちのおもちゃには思えないように、数ある指揮者や歌手のわがまま、自己満足、力を誇示するために録音されたレコードの中でもツタンカーメンの黄金のマスクに匹敵する文化遺産になるレコードです。録音のためのスタジオから、当時最新だった録音機まで気配りも怠りなかっただけに面白いサウンドに仕上がっています。ステレオ録音が未だ実験段階だった時期の録音なのですが、それが俄に信じ難いほどの優秀録音です。
1957年ロンドン、アビー・ロード・スタジオでのローレンス・コリンウッドとヴィクター・オルロフのプロデュース、ロバート・ベケットによるステレオ・セッション録音。