34-16746

商品番号 34-16746

通販レコード→仏ラージ・ドッグ・セミサークル黒文字盤

すべての音は何かを語っている。無駄な音はひとつもない ― 日本各地で行われたマスタークラスにおいて、どんなジャンルを歌う受講生に対しても、ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの教えは「あなたはあなたの言葉で語らなければいけない」ことに共通していました。伊能よし子さんとのインタビューにも、このような教えが出ていた。「私にとってサルスエラは、ふつうのオペラやリートを歌うのとまったく変わりません。ただし、サルスエラは歌詞が日常生活に即したもので、内容も庶民的なものが多い。その意味では自分の血で歌えるというか、自然な気持ちで入っていけるの」。マリア・カラスやレナータ・テバルディらと同時代に活躍した歌い手だが、胸のすくような技巧を誇示したりはしない彼女の歌唱に共通して感じられるのは、細やかで清楚な歌いぶりなのである。カラスがその霊感に満ち満ちた強烈な劇的演唱のために、他のすべてを ― 声の美しささえも、表現のために ― 犠牲にしたのに比べると、実に対照的だ。モーツァルトからワーグナーの、どの役にも適合するような声のキャラクターと、カリッと上品な砂糖菓子のような軽い声質は唯一無二の個性だろう。そして、「私は喉を大切にしたいから、あまり買い物をしたり人混みには出ないようにしているの。でも、日本に来るとどうしても買いたいものがたくさんあって、つい出かけてしまう。昨日も足袋と扇子をいっぱい買ってしまったのよ」彼女は大の足袋好きで、家では洋服の時も足袋を履いていたらしい。「プッチーニの《蝶々夫人》で初めてニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビューする前に、一度フランスのボルドーの歌劇場で《蝶々夫人》を歌ったの。その時、プッチーニの愛人だったロシア人歌手のクズネツォーヴォさんがまだ存命で、着物の着方から演技の細かいところまで、彼女が全部教えてくれたのよ。私はこの時まで着物の着方をまるで知らなかったから。そして最後に、彼女がプッチーニからプレゼントされたという日傘まで私にくださったの。これはいまや家宝よ」それ以来、ロス・アンヘレスはすっかり着物ファンになってしまい、自宅でくつろぐときは必ず着物を着ていたとか。無論人並み以上の努力はあっただろうが、強烈な個性を打ち出そうとうは決してせず、癖のある個性を強調した歌い方ではないのに、またきちんと役の違いを歌い分けているのに、どれを聴いてもロス・アンヘレス、というのはある。自分の〝素材〟の良さをしっかり知っていた人だったのだろう。 不思議な歌手だ。大歌手と呼ばれる柄ではなく、人柄はチャーミングで優雅、かつかわいい女性だったらしい。イタリア物もフランス物もドイツ物も非常にうまくこなし、バイロイト音楽祭にも出ている。ワーグナー・オペラのヒロインの中でもお姫様系統のエルザ(ローエングリン)やエリーザベト(タンホイザー)では最高だったらしい。美しく豊かな声、優れた歌唱技術、的確な様式感と表現力、温かみのあるフィーリング、誰からも好かれる人柄、イタリア、フランス・オペラはもちろんモーツァルトからワーグナーまでこなす広いレパートリー。「今まで数多くのオペラを歌ってきたけど、やはり《蝶々夫人》《ラ・ボエーム》《マノン》が自分の代表作といえるかしら。後は《ファウスト》と《セビーリャの理髪師》ね。もちろんファリャの《はかなき人生》を始めとして《7つのスペイン民謡》はよく歌っているわ。ファリャは学生の頃から愛唱しているんですもの」。フランコ政権を避けて、デ・ファリャは彼女が学生の頃アルゼンチンに移ってしまったため面識はなかったが、自国の作曲家ゆえ親しみをもって歌い続けているという。ロス・アンヘレスは、名伴奏家といわれたジェラルド・ムーア(1899〜1986)とは親友だった。ブラジルの作曲家エイートル・ヴィラ=ロボスとも深い親交をもった。そんな多くの人との出会が彼女の歌を豊かにし、聴き手にいい知れぬ深い感動を残す。名前のアンヘレスとはスペイン語で天使のこと。多くの聴衆や指揮者たちから愛された彼女は、〝天使のビクトリア〟と呼ばれていたという。大ベテランの歌姫は気難しいと思いきや、とても気さくでオープン、その歌声と同様に温かい人柄だった。まず彼女の歌声に嫌悪感を抱くことはないだろうし、オペラ初心者にもお勧めです。→コンディション、詳細を確認する
関連記事とスポンサーリンク
至高のマノン歌いヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの非の打ちどころがない。且つモノラル録音ながら歌劇「マノン」の理想的演奏として忘れ難い名盤。オペラ・コミック管弦楽団の機知に富んだニュアンスや、マスネの音楽に魂を吹き込むピエール・モントゥーの情熱的な指揮が絶品である。
  • Record Karte
  • マノン:ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス(ソプラノ)、騎士デ・グリュー:アンリ・ルゲ(テノール)、デ・グリューの父:ジャン・ボルテール(バス)、マノンの従兄:ミシェル・デン(バリトン)、ギヨー:ルネ・エレン(テノール)、パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団、合唱団、ピエール・モントゥー(指揮)。録音:1955年4月30日〜6月22日パリ、Salle de la Mutualite(モノラル)
  • FR VSM C053-10144/6 ピエール・モントゥー マスネ…
  • FR VSM C053-10144/6 ピエール・モントゥー マスネ…
マスネ:歌劇「マノン」(全曲)
ピエール・モントゥー
Naxos Historical
2008-03-05