34-16750
商品番号 34-16750

通販レコード→仏カラー・スタンプ・ドッグ盤
カラスは自分が主役となるオペラしか出演を承諾しなかった。 ― 世紀のディーヴァ、マリア・カラスが亡くなってから、もう40年が経つ。1977年に53歳で世を去ったカラスは、生涯最後の公演を1977年11月11日に札幌の厚生年金会館で行っている。満場の聴衆の総立ちの喝采を浴びたスーパースターは、この公演のあとパリの自宅に引きこもり、3年後に早すぎる謎の死を遂げた。しかし、オペラ座での公演はラジオ中継されたし、オペラ映画をつくるのがステイタスでもあった時代も重なり、その録音・映像はかなりの数残されており、これらを通して第2次世界大戦後のイタリア・オペラにおける稀有の逸材の片鱗でも知ることができるのは幸せなことだ。カラスは歌劇における演技力、役の心理の理解に優れた歌手だった。役中人物になりきって歌うカラスは想像以上に美しく激しかった。ボーイトのオペラ「メフィストフェーレ」第3幕で、マルガリータが歌うアリア「暗い海の底へ」の歌い出しがすばらしい。フェードインする歌い出しを、やや暗い声で歌い始めている。この音色の選択の適切なことといったら神技と言い得る。まさに1曲入魂の気迫にあふれた歌をきかせている。すでにこの役柄に完全になりきっているからできることであり、ここではカラスはマルガリータなのだ。音だけの世界からも一人の女の悩み、あるいは喜びといったものが如実に感じとれる。カラスは豊かな美声に恵まれた幸せな歌手と言うよりも、まず演じることの天才であったらしい。ソプラノによるオペラ・アリアの中でも、有名アリアをそろえたコンピレーションでピュアに魅惑を見いだせるのは、オペラの場面を思い起こした上であればこそ、幽玄にしてドラマティックなカラスの歌声が、より説得力を得て至福の空間を作り上げる。オペラのストーリーを理解して、ラジオから聴こえてくる歌声で中世の歴史ドラマをイメージしていた当時のイタリアの聴衆。カラスのアリア集は、美声に酔いしれるだけのポートレイトではなく稀代のディーヴァの、舞台姿を思い起こさせる機会を与えるドキュメントものなのだ。声だけでこれだけの「演技」のできるソプラノは、後にも先にもカラスだけであろう。オペラに興味をもった人なら、ぜひカラスの歌は聴いてほしい。オペラに近代劇の本質をもちこんだ、彼女の演ずるヒロインは総て生々しい人間と化して目前に迫ってくる。カラスが意欲的取り組み、このオペラが再評価されるうえに大きな役割を果たした「メディア」(第3幕)を筆頭に、カラスの芸歴の上でも重要なオペラで、カラスによって決定的な人物像にしあげられた「ノルマ」(第2幕、終場)や「ランメルモーアのルチア」(狂乱の場)など有名なオペラから、現代でも上演の少ないオペラまで彼女の魅力を知るには欠かせない名場面ばかりをセレクトした「マリア・カラスの芸術」。
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マリア・カラス(Maria Callas)は1923年12月2日、ニューヨーク生まれのソプラノ歌手。1977年9月16日、パリにて没。13歳で故国ギリシャに帰り、アテネ音楽院で名歌手、エルビラ・デ・ヒダルゴに師事。1938年にオペラ・デビューし、1947年、ヴェローナ音楽祭でのジョコンダ役で一躍注目を浴びる。1950年のスカラ座デビューから約10年間が全盛時代。ワーグナーのドラマティックな役と、ベル・カント・オペラの両方の分野で成功を収め、不世出のソプラノ歌手として名を残した。42歳だった1965年にオペラの舞台から退いたが、1969年に映画『王女メディア』に主演したほか、舞台演出、音楽院の講師を務め、1973~74年に世界各地でフェアウェル・コンサート・ツアーを行った。オペラ歌手としての充実した活動期間は短く、1951年からの7年間が全盛期、歌声に波があった1960年代まで含めても10数年にすぎなかった。早すぎる衰えは、若い頃に難曲で喉を酷使したため、あるいはダイエットのせいとも不摂生のせいともいわれる。全盛期のモノラル録音と比べスタジオでセッション録音されたステレオ録音の歌唱には年齢的に最盛期とは、もはや言えないし声の変化はいかんともしがたいものがありますが、それを超越した表情づけのこまやかさ、心理描写の絶妙さは、精妙な構成力が際立った歌唱になっていきます。ドラマに対する類まれな冴えた感覚と、それに完璧に連動する歌唱力を持ち合わせていた稀代の名歌手マリア・カラスは、1953年の『ドン・ジョヴァンニ』からのマイク・テストから、レッシーニョとの1960年台の録音まで、キャリアのほとんどの期間でEMI専属の歌手としてジョルジュ・プレートル、トゥリオ・セラフィン、ガブリエーレ・サンティーニ、ヴィクトール・デ・サーバタ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、アントニーノ・ヴォットー、ニコラ・レッシーニョ、アルチェオ・ガリエラらとレコーディングを行っていました。1977年、訃報を追悼してリリースされた2枚組。劇的な人生、空前にして絶後の歌姫の無垢な姿がここにある。今日、新年会の二次会で視覚障害者の話題となったが、熊本博物館で蓄音機コンサートをしていた時期に知覚障害の若者から、マリア・カラスを薦められて聴いてみたけど良いとは思えなかったと質問されたことがある。マリア・カラスの真価はアリアだけを選りすぐったレコードで試しただけではわからない。
Side-A
  1. Médée - Acte III - Cherubini
Side-B
  1. La Vestale - Acte III, Scène 6 "O Nume Tutelar" - Spontini
  2. Norma - Acte II, Scène Finale - Bellini
Side-C
  1. Le Barbier De Seville - Acte I "Una Voce Poco Fa" - Rossini
  2. Anna Bolena - Acte II, Scène Finale "Piangete Voi..." - Donizetti
Side-D
  1. Lucia Di Lammermoor - Acte II, Scène 5 (Scène De La Folie) - Donizetti
  2. Macbeth - Acte IV, Scène 2 "Una Macchia E Qui Tuttora..." - Verdi
  3. Les Verpes Siciliennes - Acte V : Bolero - Verdi
Side-E
  1. Le Truc En Italie - Acte I "Duo" - Rossini
  2. La Somnambule - Acte I - Air D'entrée D'Amina "A Te Diletta" - Bellini
  3. Les Puritains - Acte II, Scène De La Folie "O Rendetemi La Speme", "Vien, Dilette" - Bellini
Side-F
  1. Le Trouvere - Acte IV, Scene 1 "D'amor Sull'ali...", "Miserere" - Verdi
  2. Le Bal Masqué - Acte II, Scène 1 Et 2 "Ma D'all'arido Stelo", "O Qual Soave" - Verdi
Side-G
  1. La Gioconda - Acte IV, Scène 1 Et 2 "O Pïetosi", "Suicidie" - Ponchielli
  2. LCavalleria Rusticana - "Voi Lo Sapete", "No Turiddu" - Mascagni
Side-H
  1. Tosca - Acte I - Duo "Marie, Marie", "Non La Sospiri" - Puccini
  2. Madame Butterfly - Acte I - Duo D'amour - Puccini
餅は餅屋で … というわけで、イタリアには「イタリア・オペラしか指揮しない指揮者」が大勢存在する。イタリア・オペラの泣かせるメロディをイタリア人指揮者が流麗華麗に歌わせる。その歴代最高の指揮者がトゥリオ・セラフィン(Tullio Serafin)である。1878年9月1日、ヴェネツィア近郊のロッタノーヴァ生まれの指揮者。1968年2月2日、ローマで没。ミラノ音楽院を卒業後、スカラ座のヴィオラ奏者を務める。1898年、フェラーラのテアトロ・コムナーレで指揮者としてデビュー、1909年にはミラノ・スカラ座の首席指揮者、音楽監督に就任する。1924年からメトロポリタン歌劇場で活躍したが、1934年からはローマ歌劇場の音楽監督を務める。20世紀最高のイタリア・オペラ指揮者として広く認められており、多くの名歌手を育てることにも優れた手腕を発揮した。セラフィンの棒による演奏はイタリアの風土、イタリア人の体臭が匂い立つ。「ヴァイオリンがすすり泣く」とは、このことかと誰もが、そのドラマ性あふれる演奏に驚嘆し、一瞬の「間」に息を呑む。そして「ただの美しさ」とは異なる、身もだえするような美しさの虜になるに違いない。一度ヴェルディのオペラ『椿姫』の前奏曲(第1幕・第3幕)を指揮した彼の録音を聴いてほしい。一瞬たりとも音楽が弛緩することなく、歌手たちの歌も丁寧に引き立てていきます。
1968年初発。4枚組。
FR EMI 2C165-5205619 マリア・カラス オペラ歌曲集
FR EMI 2C165-5205619 マリア・カラス オペラ歌曲集