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ヴィヴァルディの〝四季〟は20世紀の作品だった ― 新型コロナウイルスは私たちに新しい生活様式を求めていますが、長時間の密にならないように、換気をとることを必要となった。鑑賞会では人数制限をしなくてはならないのか、時間を短くするための、プログラムは、進行はどうするか、と今朝も夢に見た。頭から離れないのかシミュレーションしているようだ。この変革を遠い未来では、どう認識されるのだろう。西洋音楽史は楽器の歴史から学習します。新しい生活様式のために、人類が獲得した最初の楽器はハープで、弓型をしたハープを紀元前4,000年のエジプト文明の、ピラミッドの壁画のあちこちから確認することができます。やがて紀元前2000年のエジプトの絵画にトランペットが描かれており、その存在が実証されていますし、約3000年前のエジプトで見つかった出土品の中から、青銅製と銀製のトランペットと思われるものも見つかりました。初めのトランペットは、1本のストローのようなまっすぐで単純な楽器でした。素材は木や植物の茎、樹皮、粘土、人骨、金属など、時代や大陸によって様々です。もともとは音楽を演奏するためではなく、宗教的な儀式や軍隊で使われていました。聖書には「終末を告げるラッパ」という記述があり、宗教と強い結びつきを持っていたことがわかります。また、ギリシャ時代、ローマ時代には、戦争行進にトランペットが用いられ、その後もヨーロッパの王侯は必ずラッパ隊を持っていたと言われています。再現芸術の音楽にとても大事な楽譜が西暦1,000年になってからで、その原型は、11世紀イタリア、 修道士のグイド・ダレッツォによって考案された。1098年、神聖ローマ帝国のドイツ王国の地方貴族の娘に生まれた、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンが最初の作曲家。医学・薬草学に強く、ドイツ薬草学の祖とされる才媛で、神秘家であり、40歳頃に「生ける光の影」の幻視体験をし、女預言者とみなされた。50歳頃、ビンゲンにて自分の女子修道院を作ったので、〝ビンゲンのヒルデガルト〟と呼ばれている。自己体験を書と絵に残したので記憶に留められた。具体的な幻視の状況について、彼女は1175年にベルギーのガンブルー修道院出身のギベール・ド・ガンブルーへの書簡の中で〝生き生きした光の影〟が現れ、その光の中に様々な様相が形となって浮かび上がり輝く。炎のように言葉が彼女に伝わり、また見た物の意味付けは一瞬にしてなされ、長く、長く記憶に留まる。また別の〝生ける光〟がその中に現れる事があるが、それを見ると苦悩や悲しみがすべて彼女から去ってしまい、気持ちが若返る。と述べている。また、この頃から典礼用の宗教曲を作詞作曲し始める。彼女の作曲した典礼劇『諸徳目の秩序』は、作者の知られた典礼劇そして道徳劇としては最も古い。ヒルデガルトはベネディクト会系男子修道院ザンクト・ディジボードの近くで隠遁生活を送る修道女ユッタ・フォン・シュポンハイムからプサルテリウムの演奏の手解きを受けており、合唱の伴奏楽器として使用したと思われる。これが、信仰を伝えるためでもあった、音楽と楽器の結びつきの始まりである。西洋音楽史上最初の作曲家で、女流音楽家だったヒルデガルトが得意とした楽器、プサルテリウムは木箱に24本のピアノ線を張った楽器で、〝指で弾く〟というギリシャ語〝Psallein〟から派生した言葉でハープを意味していた。これが、リラの伴奏で歌う賛歌の意味である〝Psalmos〟の名に現れるものとなり、18世紀までに極めて異なった幾つかの楽器に派生していく。ハンマーで叩く打楽器は「ダルシマー」となり、鍵盤機構をつけた鍵盤楽器は「ハープシコード」となった。民族舞曲の伴奏楽器として発展していくもの、貴族社会での歌の伴奏をする通奏低音に進化していく、はじめてがここからとなる。西洋音楽史の補講は明日にも割り振りますが、まあそういうことで、最近よく聴いているヴィヴァルディであります。
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今回は《和声と創意への試み》作品8。ヴィヴァルディが独奏ヴァイオリンと通奏低音付き弦楽合奏のために書いた12曲からなる協奏曲集。いうまでもなく、第1番から第4番までが「春」「夏」「秋」「冬」と呼ばれ、この4曲を総称して「四季」と言われているものです。この「四季」の他に、8曲の協奏曲がありますが、5番「海の嵐」、6番「喜び」、10番「狩」と標題が付けられた曲もある。しかし、この〝和声と創意の試み〟は実に聴きやすい協奏曲集です。前半の6曲は、最初に四季の4曲が鎮座されているということで、こっちはあまり聴きません(笑)。後半の7番からの6曲をよく聴きますねえ。すべて、三楽章の形式で、Allegro-Largo-allegroの急緩急のもの。長調と短調が2:1の割合になっており、どちらもいいですねえ。ただ、飽き安いところは否めませんね。 さてこの曲、イタリア合奏団の演奏もいいのですが、今回はイ・ムジチ合奏団のものということで。フェデリコ・アゴスティーニぼ独奏による1988年7月~8月の録音。イ・ムジチのこの曲の録音は、いくつかありまして、まずフェリックス・アーヨによる1959年盤、ピーナ・カルミレッリの1982年盤、そして、このアゴスティーニによる1988年盤など、おそらくはこの3種類があることと思います。この中で、アーヨのヴァイオリンの1959年盤に魅力を感じておるのですが、これは持っておらず、あるお店にあるのを知っておりますので、次回にぜひ、と思っております。加えて、このCDは私のものではなく、実は義父のものであります。かなり前にお借りしたもので、お返しするのをついつい忘れてしまい、それで返し辛くなったので、今もうちにあるのでありました。申し訳ありません。 イ・ムジチのこの演奏、私は好きです。独奏ヴァイオリンとオケ(というほど大きなものではないですが)とのバランスが非常にいい。ヴァイオリンの美しさというより、弦楽合奏の素晴らしさを実感できます。そして、すべての弦の美音が全体を包み込んでいます。落ち着いたテンポで、曲を正面から捉え、曲のよさがたいそうよく表現されているのであります。第7番と第8番の二つの短調の曲はいいですねえ。第7番はニ短調。ヴィヴァルディがもの思いに沈んだ気分を表現するときに好んで用いた調ですが、全編十分もかからない曲ですが、適度な悲しみが爽やかに描かれ、イ・ムジチの弦も過度ではなく、さらりと奏でています。そうは言っても、聴き込むと奥行きの深さを感じる演奏でもあります。旋律の美しさが爽やかな弦で表現されているのです。第2楽章のLargoはいいですねえ。そして、第8番はト短調。第2楽章のLargoが実に魅力的です。アゴスティーニのヴァイオリンが情緒にあふれ絶品です。第9番はオーボエ協奏曲。ここでも第2楽章のLargo。オーボエの気品に満ちたソロが綿々と続きます。第11番と第12番はニ長調とハ長調です。ともにここでも第2楽章のLargoがいい。控えめですが祈りに満ちたヴァイオリンとそれを引き立てる伴奏が素晴らしいです。Largoは実にいいですねえ。
突飛な仮説を立ててみる。9月8日にNHK-FMで放送された『きらクラ』で、〈パッヘルベルのカノン〉の、陽の目をみない兄弟曲として〈シャコンヌ〉が紹介された。情報を寄せた投稿者が説明する通りには見つからなくて番組では、見つかりませんでしたと理って、オルガン曲の〈シャコンヌ ヘ短調〉が放送された。聴き終わった後で、ふかわりょうさんが「短調の曲しかないのはどうしてだろう」といった趣旨の感想には、一緒に番組のパーソナリティをしている遠藤真理さんに返事を求める感じがあったが、パッヘルベルには〈シャコンヌ ニ長調〉〈同ヘ長調〉の録音も多い。デジタル録音が本格化して「バロック名曲集」として最初に発売されたクルト・レーデル盤で、弦楽合奏による演奏を聴くことができる。さて、〈パッヘルベルのカノン〉は、原曲は『カノンとジーグ』。カノンは、〈カエルの合唱〉と同じ輪唱。輪唱が全く同じ旋律を追唱するのに対し、カノンでは、異なる音で始まるものが含まれる。また、リズムが2倍になったり、反行、逆行する特殊なものもあるが、パッヘルベルの〈カノン〉は、三声の同度カノンであるが、カノン声部だけで構成される純粋なカノンではなく、オスティナート・バスを伴う点が標準的なカノンとは異なる。半終止で終えられるごく短い2小節単位で進められながら、全27種類の旋律が編まれる。最後を〈ジーグ〉が〆るもので、パッヘルベルのスコア通りだったら、繰り返しを省略しても一時間の演奏になる。〈パッヘルベルのカノン〉の人気は、クルト・レーデル盤の6分間の演奏でも長く感じることだろう。オーソン・ウェルズの1962年の映画『審判』(The Trial)で使用されて、《アルビノーニのアダージョ》として親しまれる人気曲も、現在では完全なレモ・ジャゾットの創作であることが判明している。ジャゾットの名はアダージョの編曲者としてとりわけ有名になったが、この曲の版権はジャゾットが持っていたという落ちがある。秋の深まりとともに、その季節感を感じたいと選ぶのは、日本と同じような四つの季節を織り込んだ作品。ヴィヴァルディとハイドンの「四季」を取り出してくる。秋に限ったことではないですが、春、夏、冬に聴く「四季」のレコードは、長年繰り返している間に、違うものがレコード棚の一角を確保するようになりました。SPレコードの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」でモーツァルトが一般に認知されたように、ヴァイオリン協奏曲12曲からなるヴィヴァルディの「和声と創意の試み」作品8の第1から第4曲の、「春」「夏」「秋」「冬」の4曲を選んだのは、片面15分とされていた初期のLPレコードに最適だった。それを「Le quattro stagioni」とタイトルをつけてミュンヒンガー盤をデッカが発売。日本での発売で「四季」とつけたことも相乗効果で評判になる。これらレコード会社の発明だといっていい。耳馴染みがある名曲ですので意外かもしれませんが、「四季」の楽譜が再発見され出版されたのは第2次世界大戦後の1949年のことでした。戦前のクラシックファンはこの名曲「四季」の存在すら知らなかったというわけです。これをデビューしたばかりのイ・ムジチ合奏団が演奏して、イタリアのイメージにぴったりだった。さて、『調和の霊感』作品3でヴィヴァルディを知った、18世紀のヨーロッパ中の音楽ファンにとって、『ラ・ストラヴァガンツァ』作品4の印象はどんなだったろう? ― 現代曲の録音が多いサシュコ・ガヴリーロフで『四季』の後で聴く『ラ・ストラヴァガンツァ』から《第2番 ホ短調》は、とにかく刺激的だ。『調和の霊感』の成功を受けて、もっと聴き手を驚かせてやろうというヴィヴァルディの意気込みがビンビン伝わって来る。イ・ムジチ合奏団盤が1959年録音で、本盤は1961年。20世紀に再発見された音楽を、同時代に作曲されたものと考えているようだ。「心地よく聞き流したい」バロック音楽のイメージよりは、高級感ある演奏であり、リッチな気分、というと言い過ぎですが、声楽なしで、この時代のこれだけ重心の低い作風は特徴的です。次から次へと湧き上がる楽想の豊かさ。明確な主役 ― プリマ・ドンナ的なソロを、合奏が盛り立てる、近代ヴァイオリン協奏曲を予感させる形。『調和の霊感』の後では、まさに奇妙、狂態。ヴィヴァルディならではの超絶技巧でもガブリーロフの妙技は冴え渡り、『ラ・ストラヴァガンツァ』ならではの魅力を、しっかりとした聴き応えを以って、見事に鳴らし切る。音楽の焦点をソリストに絞ることで生まれる絶大なインパクト。そうして明らかにされる、ヴィヴァルディによる作り込まれた奇妙、狂態のおもしろさ。これが本盤を引き締めている。密度の濃い演奏となっていて、存分にヴィヴァルディの音楽、作風を感じ取ることができます。
ヴィヴァルディの「四季」といえばクラシックの入門曲として不動 の地位を保っていますが、専門家が音譜の 空き具合から色々不満を言うことはあるにせよ、数多いヴィヴァルディ作品のなかでもスターバト・マーテルとならんで、やっぱり最大の名曲でしょう。  シェイクスピア複数説というのがあります。同じように、ヴィヴァルディにも二面性を感じるときがあります。こぼれ落ちる美しいメロディがあるかと思えば、断定的な独り言がユニゾン(同音)で奏でられ、さらにそれがしつこく繰り返されて、冗談かと思いたくなる曲もあります。本当に同じ人が作ったんでしょうか。  それにこの時代、作曲家は同じフ レーズを別の曲で何度も使い回してお金を稼いでいたところがあります。「これはどこかで聞いたメロディだけど、あ、あれと同じだ」となるわけです。  しかし四季にはくどい冗談はないし、似たフレー ズを他でも聞くことはあるものの、春、 夏、秋、冬、どこをとっても簡潔で美しい旋律に満ちあふれ、楽章間の見事なコントラストがあって、真に芸術的な小説家が生涯に書く傑作は数本だけという状況に似ているような気がします。  ヴィヴァルディは謎の多い作曲家で、膨大な作品を作りながら長い間忘れられており、本格的に再評価されるようになったのは20世紀に入ってからです。 イタリアで再研究が始まったのが4、50年代、頻繁に演奏されるようになったのはその世紀も半ばを過ぎてからでした。四季自体も出版こそ1725年のアムステルダムでしたが、初めての録音が行われたのは説が分かれて1939年か42年。しかしステレオが普及して以来の半世紀には様々な録音が百花繚乱、咲き乱れてきました。そしてこの曲がヴァイオリン協奏曲の形をとるためもあり、特に古楽器ブーム以降時代が下るにつれて、四季はヴァイオリニストが自分をアピールするための派手な舞台となっているようです。そこで今回は イ・ムジチから最近のものまで、話題になった CDをピックアップして少しだけ聞き比べてみようと思います。  ステレオ録音に限って言えば、最初にこの曲を世に紹介する役割を果たしたのはミュ ンヒ ンガーの58年盤でしょう。ドイツ語の響きを聞くような、フレーズのくっきりとした演奏です。さらにその翌年に出たのが「私たちは音学家」を意味する イタリアの「イ・ムジチ」合奏団です。そして四季という曲がクラシック入門の定番なら、演奏の定番は長い間この イ・ムジチということになりました。少なくとも70年代に入った頃からは、毎月毎月、クラシックレコードの売上げナンバーワンはこれでもかというほどイ・ムジチの四季と決まっていました。ヴァイオリニストはアーヨ、ミケルッチなどと録音ごとに変わりましたが、イ・ムジチがトップの座を明け渡すことはありませんでした。そして二位には赤と緑のリンゴのジャケットのカラヤン盤が入るのです。当時の演奏のほとんどは、どれもテンポが一定していて表情も節度のあるものでした。ヴィヴァルディの四季はイ・ムジチ合奏団の1963年の初来日以来ずっと演奏しているもの、十八番中の十八番、まさに横綱相撲、この曲での理想的なものではあった。

David Josefowitz, Collegium Academicum De Genève, Igor Ozim, Pierre Rosso ‎– Antonio Vivaldi ‎– Il Cimento Dell' Armondia E Dell Inventione, Opus VIII

Side-A
  1. Les Quatre Saisons - Concerto N°1 En Mi Majeur "La Primavera"
  2. Les Quatre Saisons - Concerto N°2 En Sol Mineur "L'Estate"
Side-B
  1. Les Quatre Saisons (fin) - Concerto N°3 En Fa Majeur "L'Autumno"
  2. Les Quatre Saisons (fin) - Concerto N°4 En Fa Mineur "L'Inverno"
Side-C
  1. Concerto N°5 En Mi Bémol Majeur "La Tempeste di Mare"
  2. Concerto n°6 en ut majeur "Il Piacere"
  3. Concerto n°7 en ré mineur
Side-D
  1. Concerto N°8 En Sol Mineur
  2. Concerto N°9 En Ré Mineur (version Hautbois)
  3. Concerto N°9 En Ré Mineur (version Violon)
Side-E
  1. Concerto N°10 En Si Bémol Majeur "La Caccia"
  2. Concerto N°11 En Ré Majeur
Side-F
  1. Concerto N°12 En Ut Majeur (version Hautbois)
  2. Concerto N°12 En Ut Majeur (version Violon)
デヴィッド・ジョゼフォヴィッツ(David Josefowitz, 1918年12月25日〜2015年1月10日)はイギリスの指揮者で、ロンドン・ソリスト室内管弦楽団の創立者。ベルリンのクリンドワース・シャーウェンカ音楽院でヴァイオリンも学んだ、熟練したヴァイオリニストでもあり、ホセ・ダビドの名義で演奏して録音していました。マサチューセッツ工科大学で化学を学んだプラスチックの専門家であり、ニューヨーク大学タンドンスクールの一部であるブルックリン工科大学で、1945年に化学の博士号を取得しました。1946年に、サミュエル・ジョゼフォヴィッツ(1921〜2015)とともに兄弟で、ニューヨーク市に本拠を置く〝Concert Hall レーベル〟を創設して、自身で多くの管弦楽曲のレコーディングを遺したほか、同レーベルのプロデューサーとして活躍しました。世界有数の音楽学校の1つで、1822年に創立された英国王立音楽院は、長い歴史と実績に裏付けられた伝統を重視。加えて、現代の音楽家に要求 される、新しい技術や知識を身につけるためのカリキュラムも組んでいます。卒業生には、ヘンリー・ウッドやエルトン・ジョンなど、著名な音楽家をはじめ、サイモン・ラトル(指揮)、マイケル・ナイマン(作曲)、リチャード・ロドニー・ベネット(作曲)、クリストファー・モルトマン(声楽)、ルステム・ハイルディノフ(ピアノ)、シモーネ・ラムスマ(ヴァイオリン)、日本人では、三浦友理枝(ピアノ)、熊本マリ(ピアノ)など、多くの優れたソリスト、オーケストラ や室内楽での演奏家、指揮者、作曲家を輩出しています。ロンドンの中心地リージェンツ・パークに隣接する便の良い場所にキャンパスでは、収容450席のデュカス・ホール、2001年に完成したデヴィッド・ジョセフォヴィッツ・リサイタル・ホールなど、素晴らしい演奏の場が待っています。
今日はスロヴェニア共和国リュブリャナ出身のヴァイオリニスト、イゴール・オジム(Igor Ozim)によるヴィヴァルディの協奏曲集。通販で販路を広げていたコンサート・ホール・ソサエティの、有名な「四季」を含むヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」作品8の全14曲の3枚組で、第9番、12番は異稿である《オーボエ協奏曲》バージョンも、ピエール・ロッソ(Pierre Rosso)の独奏で聴き併せることができる。美しくもひとつひとつの音にしっかりとした確信があるオジムのソロ。オジムのヴァイオリンでは同じコンサート・ホール・ソサエティにブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」の録音(SMS2551)があり、渋い響きとしっとりとした抒情味あふれる非常に良い演奏だった。指揮者としてシャルル・ミュンシュ、ピエール・モントゥー、ピアニストとしてリリー・クラウス、ヴラド・ペルルミュテール、ヴァイオリニストとしてダヴィッド・オイストラフ等、著名な演奏家の音源も多かったが、日本では知られていない演奏家や、明らかに幽霊オーケストラと思われるものもあった。また指揮者のワルター・ゲールのようにこのレーベルによって名を知られたアーティストもいる。1962年に通販会社日本メール・オーダーと提携し、通信販売を開始。当時の東京オリンピック前のステレオ再生装置の普及で起こった、クラシック・ブームと活発な営業活動があいまって多くの会員を集めた。また、東西冷戦中で評判はニュースとして届いていてもその演奏を聴くことができなかった日本では、会員に通信販売されるシステムを活かした、ライセンス契約されて充実されていったコンサート・ホール・ソサエティのカタログ内容は宝の山だ。当時国内だけで50万人以上の会員がいたそうで、会員になると、毎月「音楽委員」が推薦する名盤である「今月のレコード」が普通価格より35%も安く買うことができた。世界中の会員を対象に、大量にプレスするのと、直接頒布する直売システムのため、市価の2〜3割安。レコード盤自体はイギリスでプレスされて、レーベルを張り替えている。カール・シューリヒト指揮ハーグ・レジデンティ管弦楽団のブルックナー「交響曲第7番」(SMS2394)やピエール・ブーレーズ指揮フランス国立放送管弦楽団のストラヴィンスキー「春の祭典」(M2324)等、名盤も多数ある。ただ音質としては、残響が少なく腰が弱いというのを理由に、コンサート・ホール・ソサエティの盤は、音が悪いとの評価が一般的に定着している。迷惑を被っているが、イコライザーカーヴをあれこれ工夫してみよう。今までとは全く別の音が鳴りだして、シューリヒトやモントゥー晩年の一連の録音も聴き直してみたくなる。
  • Record Karte
  • Violin – Igor Ozim, Oboe – Pierre Rosso, Conductor – David Josefowitz, Orchestra – Collegium Academicum De Genève. 3x LP Box Set of the full "Il Cimento Dell' Armonia E Dell" Inventione, Opus VIII" (The Contest Between Harmony and Invention), which consists of 10 concertos, including The Four Seasons (Concerto 1-4). Includes a 4-page booklet with introduction by W.A. Chislett (english), Marc Pincherle (french), and Willi Reich (german). Released under La Guilde Internationale du Disque (sub-label of Concert Hall) but the record labels show the Concert Hall logo.
  • FR Concet Hall SMS2676 デヴィッド・ジョセフォ…
  • FR Concet Hall SMS2676 デヴィッド・ジョセフォ…
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