34-22262

商品番号 34-22262

通販レコード→仏レッド銀文字盤

暖かい部屋で静かにゆったりと聴いて頂きたい。 ― お目当てはスタンリー・キューブリック監督が、18世紀のヨーロッパを舞台に撮り上げた1975年のイギリス映画『バリー・リンドン』で使われて有名になったクラヴィーア組曲第2巻第4番 ― 本盤では第1巻からの通し番号で数えた第11番の《サラバンド》からでも構わない。故キューブリックは映画の中で本当に巧妙に知られざるクラシックの名曲を用いて驚かせてくれますが、この曲も主人公の悲劇的な後半生を象徴するかのように、太鼓を伴ったオーケストラに編曲されていて、重々しい葬送の曲のように扱われていました。ヘンデルのこの《サラバンド》は、その引きずるようなリズムがほとんど「フォリア」のように響きます。ある意味単純なのだが、無駄なものが極力省かれている所がどこまでも美しい。人には言えぬ深い哀しみや苦しみを抱えて心が疲れてしまった大人に、冬のひと時、暖かい部屋で静かにゆったりと聴いて頂きたい一曲である。ヘンデルはこのテーマに2つのドゥーブル(変奏)を加えていますが、エリック・ハイドシェックはさらに自身のオリジナルの変奏を加えていて、計7つもの変奏が続きます。《サラバンド》のテーマは弱音でサラッと弾かれていて、そこがたまらなくお洒落だ。前向きで人間的なタッチのピアノが素晴らしい。鍵盤奏者には鬼才と呼ばれる演奏家が存在する。しかしその演奏は作品に新たな光を当てる素晴らしい内容であることが多い。バッハにおけるグレン・グールド、ラモーにおけるスコット・ロスなど。その流れから言うとヘンデルはさしずめハイドシェックということになるのではないだろうか。とにかく魅力的な弾き方である。思わず最後まで惹きつけられるアルバムだ。ハイドシェックはヘンデルの組曲が好きらしく、アンコールでもしばしば何曲かを取り出して演奏しています。ハイドシェックらしい自由気ままなヘンデルには独特なチャーミングな魅力があり、ヘンデルへの思い入れに納得がいきます。その幸せな愉悦感に聴き手側も十二分に癒される。ハイドシェックはヘンデルの組曲から、バッハとはまた異なる後期バロックの鍵盤音楽ならではのよい意味でのBGMのような幸せな寛ぎ感を引き出しています。ヘンデルの組曲は、バッハが時折、メカニカルに感じられるほどに、ヘンデルの音楽は、たいへん自在でファンタジーに満ちている。なんて美しく切ないのだろう。やはりチェンバロよりピアノが似合っている。この曲集の各曲の冒頭を聴くだけでも、ヘンデルの素敵なセンスがご理解いただけると思う。ヘンデルは1685年2月23日ドイツ生まれ。バッハとは同い年であり、オペラやオラトリオ曲、教会音楽、管弦楽などの器楽作品まで実に膨大な数の作品を書き上げている。ヘンデルの活躍したバロック時代は、まだピアノが生まれる前であるから、ピアノ用のヘンデルの作品は、すべてチェンバロ用に書かれたものである。そんな中で馴染みのあるのは「調子の良い鍛冶屋」だろう。この曲はソナチネ程度のテクニックがあれば弾きこなせるが、《サラバンド》は、ソナチネどころかバイエル終盤レベルでも弾けてしまう作品だ。似たことにオラトリオ『メサイア』の合唱曲はどれも非常に簡明な技法で書かれており、バッハのような技巧的複雑さが無いにもかかわらず、あらゆる感情に訴えかけ神々しいまでの荘厳さを醸し出していた。このヘンデルでも、グールドが唯一チェンバロで録音した第1巻からの抜粋(第1番~第4番)の、わざとギクシャクとさせたオドロオドロしい演奏を聴き比べてみると、端正で単純であることから生み出される絶対的な美しさ。それがヘンデルの魅力である。
アルフレッド・コルトー(1877〜1962)の愛弟子のひとりであり、60年以上に亘る演奏歴を持っている。フランスの古都ランスのシャンパン王シャルル・エドシック家に生まれたエリック・ハイドシェックは、粋で洒脱で色彩感に富む個性的なピアノを奏でることで知られる。フランスの名ピアニスト。1936年生まれで、現在82歳になる現役。80歳を超えてなお、自由闊達で情感溢れるピアニズムを披露してくれている。その活動はもちろん国際的ではあるが、いわゆる世界トップクラスの超人気ピアニストというよりは、一部のファンに深く愛されるという印象がある。本盤は日本にもコアなファンが多く存在している、ハイドシェック若き日の名演集です。確かに恵まれた子ども時代を過ごしましたが、私の時代は戦争があった。その苦難はいまでも忘れられません。明るく見える曲でも楽譜の裏に秘められた影や暗い部分を読み取るようになったのは、この経験があるからですこう語るハイドシェックは、6歳のときに偉大なピアニスト、コルトーに才能を認められピアノを始める。コルトーも作品が内包する影を愛し、ほの暗い表現が好きでした。ですから私も作品に潜む哀愁や陰影を表現することを好みますタペストリーのように一音一音にこまやかな感情を込めて織り込んでいくハイドシェックのピアニズム故に、心に染み入る音楽が生まれるのに違いない。
エリック・ハイドシェックは、1936年に生まれたフランスのピアニストである。父はフランス北部の古都ランスを代表するシャンパン王、シャルル・エドシック、母はピアニストという恵まれた家庭に育った。5歳からピアノに親しみ、6歳の時、たまたま接した巨匠アルフレッド・コルトーの奨めで、正式にピアノを勉強し始める。8歳でエコール・ノルマル・ド・パリへ入学、1952年から、パリ音楽院でマダム・バスクールに師事し、卒業の翌年、パリのサル・ガヴォーでデビュー・コンサートを開いて、好評を博した。彼の名を一躍有名にしたのは、1957年、パリのシャンゼリゼ劇場で行ったリサイタルで、その後は、世界各国で演奏活動を続けている。1960年代のハイドシェックは、特に「モーツァルト弾き」として、数々のコンチェルトをレコーディングしている。コルトーには、その死の年(1962年)まで指導を受け続けた。このコルトー直伝の個性を優先する演奏法は、現在も彼の中で脈々と息づいている。フランス・ピアノ界を代表する演奏家で、日本では、1968年の初来日以来度々演奏会を開いて、真摯な姿勢と音楽の隠れた魅力を引き出す凄演で人々を魅了してきた。1997年6~7月の全11公演、1998~99年の3期に渡って行なわれた「ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ」演奏会は大盛況を極めた。その宇和島でのライヴ録音などを通してファンが多いが、3年ぶりになる2018年7月に、来日50周年特別公演を行った。
ヘンデル:組曲全集第4巻〜組曲第9番ト短調 HWV439、組曲第11番ニ短調 HWV 437「サラバンド 主題と変奏」、組曲第14番ト長調 HWV441、組曲第12番ホ短調 HWV438。エリック・ハイドシェック(ピアノ)、1977年ステレオ録音。見開きジャケット。CASSIOPÉEは、高額なフランス・マイナー・レーベル。
FR CASSIOPEE 369 209 ハイドシェック ヘンデル・…
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