34-23862

商品番号 34-23862

通販レコード→独ブルー黒文字盤

新たなシューベルト像の提示 ―  甘美で魅力的な旋律と、心の深淵を覗かせるような表現が印象深いシューベルトの室内楽。シューベルトの音楽はその本質的に内気なものが多いというのはよく知られている。後期の作品群に特徴的なのは、濃厚・重厚・長大で、そして悲観的な内視がある。弦楽五重奏や単一の器楽に比べると、やや特殊なピアノとヴァイオリン、チェロという組み合わせの中に、シューベルトは何か完全に「内的」ではない音楽性を感じ取ったのかもしれない。弦楽五重奏曲や後期ピアノ・ソナタなど、後期の傑作群と同じ時期に作曲されたピアノ三重奏曲は、終始明るく活き活きとしている。ウィーンのピアニスト、ルドルフ・ブッフビンダーは〝現代を代表する伝説的なピアニスト〟のひとり。ブッフビンダーが著名なピアノ教育家ブルーノ・ザイドルホーファーのマスター・クラスに入門を許可されたのは、まだ彼が11歳の時であった。教育を終えるとブッフビンダーは各地で演奏活動を行い、最初は室内楽奏者として、その後は徐々にソリストとしての地歩を固めていった。レパートリーは古典派から現代ものまで幅広く、その中には多くの20世紀作品も含まれている。さらに、ウィーンのピアノの伝統を大切にする一方で、彼は常に進歩的で多様な考え方のできるピアニストとして、幾度となくレパートリー開拓に挑み、その過程で興味深い発見をすることになった。ドイツ・テレフンケンのために、彼はオーストリアとドイツのさまざまな50人の作曲家が書いた《ディアベッリ変奏曲》を録音している。さらに、「フランス・ディスク大賞」を受賞したハイドンのクラヴィーア作品全曲録音や、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音がある。コンサートはヨーロッパの主要な音楽中心地ばかりでなく、日本、アメリカにも及んでいる。ベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタ全曲演奏の企画を立て、これはミュンヘン、ウィーン、ハンブルク、チューリヒ、ブエノス・アイレス等、既に多くの都市で実現されている。その演奏は、60年を超える輝かしい足跡に裏打ちされた、精神性と自発性とが融合した稀有なものであると評価が高い。本盤は1960年代後半の録音、地元の若手演奏家 ― ペーター・グート(ヴァイオリン)、ハイディ・リチャウアー(チェロ)を起用して組んだトリオで入れたシューベルト。シューベルトの手稿譜や初版譜なども参照し研究してきたブッフビンダーならではの高水準な演奏を実現、新たなシューベルト像の提示を成している。スタインウェイが冴え渡って聴こえるオーディオファイル盤に仕上がっている。ブッフビンダーはウィーン系の名ピアニストという程度の馴染みだったが、突然、私のアイドル・ピアニストになった。それまでは、今回紹介してきた4組もドイツ・テレフンケン盤の発売に合わせて試聴してきていて、心地良い演奏と気に入ってはいながらも、決定的なそれは、実に悔しいことに、去年9月のことなのですが。熊本地震を体験した後、とくにベートーヴェンの音楽に対しては認識を新たにし、熊本鶴屋百貨店で鑑賞会を開いて、しっかり調整されたタンノイ・スピーカーでクラシックの新旧録音盤だけでなく、アート・ブレイキー、ポール・モーリアから昭和の歌謡曲を聴いたからでしょうか。彼が弾く楽器は、不思議なことにウィーン系ピアニストの定番のベーゼンドルファーではなく、スタインウェイだった。ブッフビンダーがスタインウェイに求めたもの、それは圧倒的なダイナミックレンジと、凝縮と突きぬけ感のコントラスト、そしてロマン派表現に適する感情表現の幅の広さ。ドイツ・テレフンケン盤のレーベルにも、スタインウェイ・フリューゲルと明記されている。スタインウェイの機能を駆使した絶妙なタッチで最弱音からいきなり最強音に至るところはピアノが壊れないかと思うくらいの立ち上がりの良さ。どんな強音でも芳醇な香りがある。どんな弱音にも剛性感と輪郭感がある。ダイナミックレンジの拡大 ― CDではこの快感を得られないだろうと想像している。彼はシュタインなどのフォルテピアノを所有して楽器の研究に熱心に取り組み、時代の流れの中で変わっていたものに配慮しながら歴史楽器の多様な要素を、現代ピアノでの演奏解釈に取り込んでいったようです。ブッフビンダーの派手さとは対極のピアニズムだが〝節度を伴ったエレガンス〟 ― 節度があるからといって、音楽はかなり動きがある。だが、そこで我を忘れるものはなく、作品の志向に合わせていくアプローチ。それこそ彼の節度。そこに〝伝説的〟と称されるウィーンのエレガンスが漂う。スタインウェイの高性能を最大限に発揮させた名演奏だった。→コンディション、詳細を確認する
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ウィーンを中心に世界中で活発な活動を展開しているピアニストのルドルフ・ブッフビンダーは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏をライフワークとしている。録音のみならずステージでも全曲を取り上げている。日本にもたびたび来日を重ね、2013年秋の来日公演では、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲の弾き振りを披露し、その円熟のピアニズムは各紙誌で絶賛を受けました。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、ソニー・クラシカルへの2010~11年ライヴ録音盤が高い評価を得ていますが、まだ30歳台で録音したテルデックへの全集は、セッションということもあって、細部の仕上げの精度が驚異的なレベルに達しており、なおかつ時代様式を鑑みた説得力のあるスタイルが常に維持されるなど、当時のブッフビンダーにしかできなかった完璧な演奏が多くのピアノ・ファンの心を掴み、世界的にも高い評価を獲得していたものです。ソナタには18以上の印刷譜が存在していますが、自筆譜は意外と残っていません。リストは最高のピアニスト&作曲家であり、ベートーヴェンを崇拝してその楽譜を校訂しましたが、彼なりの楽譜への大がかりな書き込みによって、毎回違った弾き方になってしまうほど、アイデアが楽譜に刻まれています。ブッフビンダーがプレス・インタビューで語っていますが、本人は一つ一つの音符、休符、フレーズ、強弱、リズムなどをこまかく研究し、少しでも作曲家の魂に寄り添う演奏をしたいと云っているようですが、この選集を聴くと有言実行であることがよく分かります。ベートーヴェンの32曲の中には彼の生活の全てが内包されています。そこには、女性への報われない恋心も、パトロンへの感謝の気持ちも見て取ることができます。ブッフビンダーのこのときの取り組みは、ソナタ全集だけでなく、変奏曲やバガテルなども含む〝ピアノ作品全集〟であり、有名なソナタ全集での演奏の傾向は、変奏曲やレアな小品の場合にはより大きな説得力を持つこととなり、作品の姿を正確に示したそのクオリティの高さには以前から定評がありました。楽器は、スタインウェイ。
Wiener Trio ‎– Rudolf Buchbinder, Peter Guth, Heidi Litschauer, Franz Schubert ‎– Sämtliche Klaviertrios - The Complete Piano Trios
  1. Trio B-dur Für Klavier, Violine Und Violoncello Op. 99 (D 898)
  2. Notturno Es-dur Für Klavier, Violine Und Violoncello Op. 148 (D 897)
  3. Trio Es-dur Für Klavier, Violine Und Violoncello Op. 100 (D 929)
  4. Sonate B-dur Für Klavier, Violine Und Violoncello, Komp. 1812 (D 28)
  • Record Karte
  • ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)、ペーター・グート(ヴァイオリン)、ハイディ・リチャウアー(チェロ)。2枚組、1972年リリース。
  • DE TELEFUNKEN TK11526/1-2 ウィーン三重奏団…
  • DE TELEFUNKEN TK11526/1-2 ウィーン三重奏団…
Chamber Music by Schubert
Schubert;Buchbinder;Haydn Trio Wien
Elektra / Wea