34-20376

商品番号 34-20376

通販レコード→独ライト・ブルー黒文字盤

現代人の感覚にフィットしたウィーンの音楽 ―  アルバン・ベルク四重奏団の演奏は盤石の安定感で、クッキリとしたメロディーを、踏み込みすぎずに奏でて行くスタイル。ハイドンの音楽に潜む人間的なウイットとかユーモアの表現を裏切ってくれて、心地よかった。作曲年代は1792~93年、つまりモーツァルトが亡くなった直後、ハイドン自身が最初のロンドン遠征から帰ってきたばかりの頃に書かれた、ハイドン自身の創意が最も幸福な充実をみせていた時期。何を書いても傑作になってしまう晩年の創意をふんだんに発揮しながら、ハイドン自身楽しんで書いたのだろう。愉悦あふれる世界が広がっている。第74番の愛称である《騎士》 は、第4楽章の第1主題が馬のギャロップを想起させることに由来する。ほの暗い表情を織り交ぜながら、かなり多彩な展開。「ハンガリー風の響き」が絶品。唯一の短調曲として暗色の美を醸し出す《騎士》の意気揚々たるテンポも最高。ギュンター・ピヒラーのヴァイオリンは他の3人のアンサンブルの調和を乱さず、うすく縁取りを浮き立たせる加工のように絶妙なもの。響きの完成度は高く、アルバン・ベルク四重奏団はハイドンの造形美を、このクッキリとした響きを造る事にこだわって聴かせたのだろう。そこをデジタルの音は硬いといわれるのを後押ししたところはあるが、この演奏を好む方も多いと思いますが、わたしにラテン音楽をいろいろと聞かせて面白さを教えようとしてくれた上司も、この〝クラシック音楽〟に夢中になってくれた。そんな昔を思い出しつつ聴いていると、今わたしが面白いよ、聴いてみてと言っているのはその上司の聴かせ方に似ていることに気がついた。思っていなかったところで伝授されていたのか。ウィーンの伝統と新しい時代感覚の見事な融合が生み出した、新しいモーツァルトの世界。モーツァルトの弦楽四重奏曲の中でよく録音されるのは第14~23番の10曲で、中でも「ハイドン・セット」と呼ばれる6曲(14〜19番)が有名です。モーツァルトは1782年から85年1月にかけ、その直前に発表されたハイドンの「ロシア四重奏曲」に大きな影響を受けつつ、6曲の四重奏曲を作曲、ハイドンに捧げた。29歳のことだった。「ロシア四重奏曲」自体、ハイドンの自信作であるが、モーツァルトはハイドンが示した優れた技法を自分のものに消化吸収し、さらに見事な作品として結実させた。「ハイドン・セット」はモーツァルトのこの分野における代表作であり、とくに最初に置かれた《春》は魅力的である。ハイドンからの影響である主題の緊密な構成、ウィーンに移り住んでからのバッハ体験による対位法的な技法、さらには半音階法や切分音の使用などが表現を極めて多彩にしている。この〝K.387〟のレコードには、スメタナ、メロス、プラハなどの鑑賞すべき演奏があり、それぞれ高い評価を受けているが、わたしはそれらのいずれにも増して、アルバン・ベルク四重奏団は推薦したい。わけても第3楽章のアンダンテ・カンタービレこそ美しさの極みである。とくに第1ヴァイオリンのデリケートな響き、チャーミングに溢れた音楽は、どんなに褒めても褒めすぎることはないと思う。アルバン・ベルク四重奏団は1989年に英EMIにデジタル録音していますが、それよりも古い時期の録音ながら本盤のモーツァルトは柔軟で優雅な印象でした。2曲の録音には開きがあり、《騎士》は1974年、《春》は1977年1月録音。ただ、第2ヴァイオリンのクラウス・メッツェルはこの録音の直後に、ゲルハルト・シュルツと交替しています。そういうわけで、これはカルテット発足時のメンバーによる末期の録音ということになります。ドイツ批評家選賞受賞盤。→コンディション、詳細を確認する
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アルバン・ベルク四重奏団は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター、ギュンター・ピヒラーにより1970年に結成。ラサール四重奏団に学び、ウィーンの音楽の伝統を尊重し、20世紀の音楽に対するプレーヤーのコミットメントを示すために、そしてアルバン・ベルク未亡人によって〝アルバン・ベルク四重奏団〟という名前の使用を許可され、1971年ウィーン・コンツェルトハウスでデビューし、忽ち国際的に活躍の場を拡げました。その名は、膨大なレコーディングによっても知られ、ベートーヴェン、ブラームス、バルトーク、ヴェーベルン、ベルクの弦楽四重奏曲全曲や、カーネギー・ホール、ウィーン・コンツェルトハウスなどでのライヴ録音など、多くの名盤が30以上の国際的な賞を受賞。ウィーン古典派とロマン派の伝統、また新ウィーン楽派との彼らの密接な関係を象徴し、更に現代音楽まで幅広いレパートリーをもち、ウルバンナー(1973、1993年)、ライターマイヤー(1974年)、ハウベンストック=ラマティ(1974、1978年)、フォン・アイネム(1976年)、ヴィムベルガー(1980年)、リーム(1983年)、シュニトケ(1989年)、ベリオ(1994年)、バルギールスキー(1999年)、シュヴェルトシク(2003年)らの作品を初演しています。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音は2度行われ、最初はスタジオ録音、2度目はウィーン・コンツェルトハウスでのライヴ録音でCDと映像でリリースされました。アルバン・ベルク四重奏団は、2005年、ヴィオラのトマス・カクシュカを死によって失うという悲劇に見舞われた。残されたメンバーは、彼らの信念とカクシュカの遺志を継いで、イザベル・カリシウスと共にコンサート活動を続けました。
  • Record Karte
  • モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番ト長調 K.387『春』、1977年1月録音。ハイドン:弦楽四重奏曲第74番 ト短調『騎士』、1974年録音。Violin – Günter Pichler, Klaus Maetzl, Viola – Hatto Beyerle, Cello – Valentin Erben.1978年リリース。ドイツ批評家選賞受賞アルバム。
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モーツァルト : 弦楽四重奏曲第14番 ~第19番 (ハイドン四重奏曲全曲)
アルバン・ベルク四重奏団
ダブリューイーエー・ジャパン
1998-08-26