34-18020
商品番号 34-18020

通販レコード→独レッド銀文字盤
聴き手を瞬時に陶酔の中へ誘う ― 集中力と感性を傾けて聴くことなしに、作曲者や演奏者を評価するのは暴挙である。これはシューマンの協奏曲に限った話ではないが、ひとたび聴くと一層そういうことを痛感させられる。ディヌ・リパッティのことを高く評価していたアルフレッド・コルトーの演奏は、唖然とするほど個性的。第3楽章冒頭の解釈に思わず仰け反るだろう。聴くほどに癖になること必置。これはシューマンの世界を咀嚼した人ならではの炯眼と評するべきだろう。今まさに音楽が生まれ、楽譜が書かれたばかりという印象を受けるサンソン・フランソワのインスピレーションに突き動かされたような第3楽章のコーダも忘れがたい。クララ・ハスキルがウィレム・ファン・オッテルローと組んだ1951年の録音は詩情あふれる名演奏で、力み返ることなくふわっと飛翔している感じがする。第1楽章の展開部など、聴き手を瞬時に陶酔の中へ誘うポエジーに溢れている。オッテルローのサポートも良い。ステレオ録音では音色の表情の付け方が実に細やかで、力強さもあるルドルフ・ゼルキンのレコードが比肩する存在だ。ルーマニア生まれで、病と闘いながらも演奏活動を続けた孤高のピアニスト、クララ・ハスキルを我々は今一度聴き直すべきです。音楽ファンに忘れがたい感動を与えた彼女の詩情に満ちた気品あふれる比類ないモーツァルトだと断言出来ます。チャーリー・チャップリンが生涯に会った天才はわずか3人にすぎなかったといった ― チャーチル、アインシュタイン ― その一人に数えられたほどでした。ハスキルは芸術・文化の中心パリでピアノを学びました。15歳でパリ音楽院を卒業した後、若くて美しい天才的なピアニストが華々しく活躍する様を想像しますが、実は闘病生活を虐げられていたということです。病気との戦いは彼女の人生を大きく支配するものとなりました。病気に加えて第二次世界大戦はユダヤ人であるハスキルに過酷な運命をもたらしました。同じルーマニア出身のリパッティとは深い友情に結ばれていたようです。しかし、そのリパッティの天才は若くして白血病に奪われてしまいました。というような彼女の生き様から、逃れられない運命に直面したときの人間の強さと孤独感を聞き取ることが出来ます。そして一方で限界に追い込まれたときの人間の本当の友情、やさしさを感ずることも出来ます。彼女は屈指のモーツァルト弾きであると讃えられますが、素晴らしい録音を残したのはモーツァルトのみならず、ベートーヴェンや、ショパン、シューベルト ― ドイツ・ロマン派の作曲家の演奏でも捨てがたい味わいがある。硬軟をあわせ持った絶妙なバランスが素晴らしく、薫りたつようなロマンティシズムも魅力。本盤は音楽ファンに忘れがたい感動を与えた彼女の詩情に満ちた気品あふれる比類ない、シューマンの演奏を聴かせてくれる。モノラル録音ながら、高貴な香りは些かも色褪せることはない。
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ルーマニアのブカレスト生まれ、リヒャルト・ローベルトにウィーンで師事し10歳で演奏会を開いた。その後、パリ音楽院でコルトー、フォーレに師事、後にブゾーニに学んだ。元来、身体が弱く4年間病床にあったが1921年に復帰、1927年からパリで活動を続けた。戦後、数々のレコーディングを行っていてモーツァルト弾きとして知られた。ネコ好きおばさん。コルトー、フォーレ、ラザール・レヴィ、そしてブゾーニの弟子。モーツァルトを得意とする女流ピアニストは数多く、クラウス、ヘブラー、ピレシュ、内田光子などがいるが、そのなかでもハスキルは特別な存在として尊敬されている。粒立ち良く、軽快で絶妙な右手のタッチから生み出されたモーツァルトの『ピアノ協奏曲』は特に絶品の演奏だった。ハスキルはブカレストの生まれだが、8歳になる以前にウィーンに移住していてゼルキンと同じ師であるローベルトに学び、9歳の時にウィーンでデビューした。わずか10歳でモーツァルトの『ピアノ協奏曲第23番』をオーケストラと共演。11歳にはパリ音楽院でコルトーやフォーレに師事したというのだから、大音楽家たちに可愛がられた天才少女の当時の才能ぶりは余程すごかったのだろう。ハスキルの抜群の記憶力と音楽的才能を示すものとして6歳の時、モーツァルトの『ピアノ・ソナタ』の、ある楽章を人が弾いたのを一度聴いただけで楽譜も知らずに、そのまま弾いたという伝説が残されている。彼女の演奏には独特のタッチと音色に特徴があるが残された録音を聴いた限り、使用している楽器もスタインウェイとは異なる独特の柔らかい響きを持つピアノを使用している。ハスキルはスタインウェイ・アーティストとしての記録もあるが録音での楽器は、おそらくベーゼンドルファーだろうか。ハスキルのモーツァルトの録音は『ピアノ・ソナタ』などの独奏曲よりも、ピアノ協奏曲の方が数多く残されている。ステレオ録音ではモーツァルトの『ピアノ協奏曲第20、24番』があり、マルケヴィッチの指揮とあいまって、晩年近いハスキルの名演として極めて高く評価されている。少女時代にも弾いたモーツァルトの『ピアノ協奏曲第23番』は控え目に始まる演奏だがハスキル独特の粒のようなタッチで全面的に覆われ終楽章は、そのタッチが跳躍する。他にも端正に弾かれたショパンの『ピアノ協奏曲第2番』もあるが、ベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ第17番、18番』やシューベルトの『ピアノ・ソナタ第21番』も得意としたレパートリーだった。
管弦楽の扱いに関してはピアノ曲や歌曲にみられる精度が足りないと言われることが多いシューマンだが、すでに交響曲第1番「春」やオラトリオ『楽園とペリ』を書いた後だけあって、その筆運びは自信に満ちており天才の閃きにも溢れている。ロベルト・シューマン(1810.6.8〜1856.7.29)のピアノ協奏曲は、1841年に書かれた「ピアノと管弦楽のための幻想曲」に手を加え2つの楽章を追加したものである。完成したのは1845年のこと。初演日は1846年1月1日、独奏は妻のクララ・シューマンが務めた。第1楽章はアレグロ・アフェットゥオーソ。トゥッティで始まり、オーボエが翳りのある第1主題を奏でる。それをピアノが繰り返した後、空気が沈潜し暗く情熱的なパッセージに入る。そして徐々に盛り上がりを見せ、ピアノがマルカートで起伏を作りオーケストラのトゥッティを導く。ここまでの僅か40小節余りで完全に聴き手を作品世界に引き込む。展開部の美しさも特筆もので、156小節からピアノと低弦が醸し出すアンダンテ・エスプレッシーヴォの幻想的な雰囲気に酔い心地にさせられる。ピアノのカデンツァから華々しい結尾に至る流れも素晴らしい。ピアノの独奏は相当の技術を要するが、名人芸本位ではなく、あくまでもロマンティックな情感を重んじたもので詩人の魂に迫る表現力が要求される。第2楽章はアンダンテ・グラツィオーソ。3部形式の短い間奏曲で穏やかな美しさを持ち、中間部でチェロが奏でるのびやかな旋律が奥行きを作っている。大胆な発想が、これ以上ないほどの必然に達しているのは第1楽章の第1主題が回想されるところで、これが効果的に繰り返された後、切れ目なしに第3楽章に突入する。第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ。第1楽章の第1主題の楽想に基づく主題が高らかに歌われる。第2主題はそれまでの3拍子ではなく2拍子風に奏されるのが特徴で、この主題がピアノのアルペジオによって劇的な形でほぐされる。コーダの構成はドラマの締めくくりとしては完璧で雰囲気を切り替えるピアノの旋律が絶妙なタイミングで入り、勢いをつけてから流れるように圧巻のクライマックスを築く。この構成は、多くの後進たちに影響を与えたのではないかと推察される。どれだけ技術が達者で綺麗に音が鳴っていても、柔軟な感性から押し出されてくる大胆さと内省的で繊細なタッチなしには理想的な演奏は成立しない。21世紀に入ってからも、エレーナ・グリモーによる2005年の録音など名演奏が生まれている。大半の名ピアニストがレパートリーにしているので20世紀半ばの録音の数は非常に多く、名盤とされる音源も多い。その筆頭と言えるのはディヌ・リパッティの演奏で音源は2種類あり、ヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮した1948年の録音、エルネスト・アンセルメが指揮した1950年のライヴ録音のどちらにもファンがついている。高い人気を誇る作品なので、映画やドラマで使われることもあり『マダム・スザーツカ』や『僕のピアノコンチェルト』の演奏シーンが印象に残っているが周知の通り、『ウルトラセブン』の最終回で使われたカラヤン盤は明快さと勢いがあるので、音質の貧弱さを責められることなく人気があるのも頷ける。
ヨーロッパ屈指の家電&オーディオメーカーであり、名門王立コンセルトヘボウ管弦楽団の名演をはじめ、多くの優秀録音で知られる、フィリップス・レーベルにはハスキルやグリュミオー、カザルスそして、いまだクラシック音楽ファン以外でもファンの多い、「四季」であまりにも有名なイタリアのイ・ムジチ合奏団らの日本人にとってクラシック音楽のレコードで聴く名演奏家がひしめき合っている。英グラモフォンや英DECCAより創設は1950年と後発だが、オランダの巨大企業フィリップスが後ろ盾にある音楽部門です。ミュージック・カセットやCDを開発普及させた業績は偉大、1950年代はアメリカのコロムビア・レコードのイギリス支社が供給した。そこで1950年から60年にかけてのレコードには、米COLUMBIAの録音も多い。1957年5月27~28日に初のステレオ録音をアムステルダムにて行い、それが発売されると評価を決定づけた。英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージがあった。
1951年3月ハーグでのモノラル録音。ピアノ協奏曲、子供の情景イ短調作品54作品15〈音楽帖から〉「色とりどりの作品 作品99」から〈三つの小品〉。
DE PHIL  6598 274 クララ・ハスキル シューマン・ピ…
DE PHIL  6598 274 クララ・ハスキル シューマン・ピ…