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しみじみと雄弁 ― ベートーヴェンの交響曲第9番は歳時記では、冬の季語になっている。秋になるとブラームスが相応しく感じられるが、実際に演奏会でブラームスが最も増えるのが秋だという。シューベルトの歌曲には季節が明確ですが、シューベルトの連作歌曲集「冬の旅」は季節を問わずしばらくすれば聴きたくなる作品の一つです。ペーター・シュライアー、エリー・アーメリング、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの1960年〜70年代半ばの録音をよく聴いた後にテノールのエルンスト・ヘフリガー、バスバリトンのハンス・ホッターに関心が行き、やがてピアニストにも興味惹かれました。ルドルフ・ドゥンケルはテオ・アダムの伴奏をしたブラームスの「4つの厳粛な歌」も素敵だったので期待できた。「冬の旅」は、感情の起伏や強い情念、疎外感等々といった世界をことさら強調する風を望みたくもなるが、しみじみと歌詞の情感が迫って来るようで、派手な演奏ではなく、淡々と器楽的に美しく演奏していた。ベートーヴェンの時代になって市民階級が豊かになり、良家の子女がピアノを習うようになると、ピアノの楽譜が売れるようになりました。その中でも連弾曲は家庭内で楽しむには最適なので、多くの曲が作曲され楽譜が出版されるようになりました。ピアノ連弾は一台のピアノを、ふたり以上で弾くこと。一人ひとりがピアノを寄せあって弾くのは、2台ピアノ、3台ピアノ... 連弾曲は、歌手と伴奏が一体となって音楽を作る歌曲のようだ。ベートーヴェンは、ボンにいた10歳代のころと、ウィーンに移ってから20歳代の若い頃に、いくつかのピアノ連弾曲を書きました。しかし4手のソナタとして出版しているのは、「ソナタ二長調 作品6」だけです。本盤では、ピアノ協奏曲第3番ハ短調、ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調「クロイツェル」を作曲した中期、傑作の森の時期の「3つの行進曲」。作品1を出版する以前の「ワルトシュタイン伯爵の主題による8つの変奏曲 WoO.67」。初めて自ら主催する音楽界を開く前年、ブルンスヴィク伯爵令嬢のテレーゼとヨゼフィーネにピアノを教授した時期にゲーテの詩「“君を思いて”による6つの変奏曲 WoO.74」。悲愴ソナタを含む初期ソナタ群に一区切りをつける連弾曲です。全体的にかなり豪放磊落な演奏で、エヴァ・アンダーはグイグイと突き進んでいく、一般にベートーヴェンらしいと思わせる演奏となっています。
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Werke für Klavier zu vier Händen
  • Side-A
    1. ピアノ連弾ソナタ Op.6
    2. 3つの行進曲 Op.45
  • Side-B
    1. 歌曲「君を思いて」による6つの変奏曲 WoO.74
    2. ワルトシュタイン伯爵の主題による8つの変奏曲 WoO.67
ステレオ初期盤は、まず英国プレス盤に人気が集中します。体系的コレクターが多く、コンディションが良好なこともありますが、今でもDECCAの2,000番代、コロンビアSAXのブルー・シルバー、H.M.V.のゴールド・ニッパーなどは無条件で良い値段で取引されています。対して東独ETERNA盤は一部を除き、今でも安価に入手できます。それは東ドイツは共産圏だったため、外部に作品が流出していない事も大きな要因だったでしょう。また、前述英国メジャー・レーベルと比べても、メロディア、オイロディスク、ドイツ・グラモフォン、EMI、フィリップスの録音をETERNAでリリースしていることでカタログの豊富さはETERNAが上で、共同で録音したもの、提携レーベルのマスターをライセンスしてETERNAでカッティングしたものなど、リリース枚数も圧倒的に多いのです。ETERNA x xx xxxというメインの型番だけでも数千種類はあるらしいです。これも特定の人気盤以外となると安価で入手できる要因になっているはずです。1960年代の英コロンビア盤と比べて聴くと、実体感は英初期盤に軍配が上がることもありますが、総じてETERNA盤がレンジが広くスッキリしています。録音、カッティング技術も優れており、他レーベルと同一作品がある場合、ETERNAの方が良いケースも多々あります。なによりカッティングが優れているので、トレースが素直です。ETERNAがステレオ盤に移行するは、他レーベルよりも遅く、1960年代後半からと言われています。黒字に銀文字のレーベルがステレオ初期盤で、1980年くらいまでこのデザインが有ります。また、黒レーベルが初出だったとしても、2版が黒レーベルエディションの場合もあれば、青レーベルもあります。8 26番代後半では「ETERNA EDITION」が初版になるようです。
ピアノ連弾ソナタ Op.6、ワルトシュタイン伯爵の主題による8つの変奏曲 WoO.67、3つの行進曲 Op.45、歌曲「君を思いて」による6つの変奏曲 WoO.74