34-12180
通販レコード→初期チューリップ、ALLE HERSTELLER 盤

DE DGG LPM18 675 マゼール ラヴェル・子供と呪文

《他者にまねのできないボキャブラリーでラヴェルを聴かせてくれる標題音楽を見事に表現するマゼールの名盤の一つ ― 30代前半のマゼールが非凡さを発揮したラヴェルの資質に肉薄しえた屈指の名演。卓越したキャストに加え、冴えた音質で立ち上がる精緻な演奏に驚かされる。》 カラヤンとの因縁深いマゼール。作曲家でもある資質と卓越したヴァイオリンの腕前といった、カラヤンがコンプレックスを抱えていた才能のある ― ムターがウィーン・フィルとの録音でチェンバロを弾き、ヨーロッパ参加を作曲したのはカラヤンの抵抗だったとしたらマゼールはなかなかの存在だったと思える ― 指揮者。冴えた閃きでカラヤンの苦手としたレパートリーを攻めてくるのだからたまらない。しかもそれが、カラヤンに負けない変態ぶり。後世に残す手本と成る録音を残そうと頑張っていたカラヤンには、そうしたマゼールの気ままぶりも辛抱ならなかったかもしれない。フランス・パリ近郊、ヌイイ=シュル=セーヌ( Neuilly-sur-Seine )生まれ。父はユダヤ系ロシア人、母はハンガリーとロシアのハーフ。生後まもなく一家でアメリカ移住。5歳頃からヴァイオリン、7歳頃から指揮の勉強を始める。8歳でニューヨーク・フィルを指揮。9歳でレオポルド・ストコフスキーの招きでフィラデルフィア管弦楽団を指揮。11歳でアルトゥーロ・トスカニーニに認められNBC交響楽団の夏季のコンサートを指揮。以後、10代半ばまでに全米のほとんどのメジャー・オーケストラの指揮台に上がっている。ピッツバーグ大学在学中はピッツバーグ交響楽団の一員として活躍。イタリアでバロック音楽を研究といった楽団員経験、まだまだ未開だったバロック音楽にも作曲、演奏の両面から造詣があった。1960年、フェルディナント・ライトナーと交代で「ローエングリン」を指揮してバイロイト音楽祭に史上最年少でデビュー。1963年、ザルツブルク音楽祭にデビューしたチェコ・フィルとのコンサートでは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を弾き振り。ヴァイオリンの腕前も魅せる。指揮者としての信頼厚かったことも、1965年にフリッチャイの後任として、ベルリン・ドイツ・オペラとベルリン放送交響楽団の音楽監督を皮切りに、1972年にセル死去後空席だったクリーヴランド管弦楽団の音楽監督に。そして、1982年のウィーン国立歌劇場総監督就任。またボスコフスキーの後任としてニューイヤーコンサートの指揮者を1986年まで務めた経歴は良く知られる。だが1984年にウィーンのポストを追われてからは、それまでとは一転して挫折の連続。ロサンゼルス・オリンピックが行われたこの年、4度目のベートーヴェンの交響曲全集を作り上げたが、うんざりしてきたベルリン・フィルと軋轢を大きくし始めたカラヤンが、ベルリン・フィルで予定していたヴィヴァルディ「四季」にウィーン・フィルを起用。最晩年になってカラヤンはウィーン・フィルとの関係を強めていった。カラヤンの晩年の輝きは魅力を増し、マゼールの影は薄れます。そしてついに、1989年10月。カラヤン亡き後のベルリン・フィルのシェフを選ぶ選挙で、マゼールはアバドに敗れ、新譜発売も途切れてしまいました。この居座古座(いざこざ)にマゼールは巻き込まれた形だ。ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に基づく自作のオペラ「1984年」には、とばっちり経験への思いが皮肉られているのかもしれない。歌ものでも非凡さを発揮したラヴェルの資質に肉薄しえた、30代前半のマゼールの演奏は聴きものので、卓越したキャストに加え、冴えた音質で立ち上がる精緻な演奏に驚かされる屈指の名演である。馴染みの薄いラヴェルのオペラでしょうが、この『子供と魔法』については,先ずは,訳など気にせず,音楽を楽しむところから入っていいのではなかろうか。これだけ楽しく,また,美しい音楽。自然と何を言っているのか気になってくる。音楽はオーボエによる穏やかな節回しの「ところはノルマンディーの片田舎。ここに6歳か7歳くらいでしょうか、悪戯好きな子供がおりました。」という前口上で始められる。オーボエ2本による子供に母親が話しかけるラヴェルの着想の素晴らしさ。聴き手は摩訶不思議な世界に自然と入っていくことができる。言うことを聞かないので母親から叱られる。しかし子供は叱られて意気消沈どころか動物をいじめ暖炉をかき回し壁紙や本をボロボロに破くなど、やりたい放題。やがて悪戯に飽きた子供がソファーに座ろうとすると、なんとソファーが後ずさり。ここから舞台は幻想の世界に入り件の子供は、反対に家具、食器、暖炉の火、お姫さま、小さな老人、木、昆虫、動物といったものから追い回されたり、罵倒されたり。ついに動物たちは、この残酷な子供を罰してやろうと決心。だが動物たちが子供そっちのけで取っ組み合いをしている最中、一匹のリスが怪我をしてしまう。その時、思いがけないことに当の悪戯っ子が身につけていたリボンを外して怪我をしたリスを介抱してあげる。そのまま気を失ってしまった子供を前に困惑する動物たち。動物たちは「あの子はいい子。賢い子だ。」と口々に言い子供を支えて家まで連れて行ってあげる。子供は両手を伸ばし最後に或る言葉を口にした後、幕が下りる。どんなことがあろうと、子供は『ママ( Maman! )』が大好き。わがままするのも、ママの気を引きたいから。普遍的な、よくある顛末。ラヴェルは日常を見つめた音楽家だった。そしてラヴェルはきれいごとだけの音楽ではないところが魅力のはず。もちろん、マゼールの指揮も素晴らしい。標題音楽を見事に表現するマゼールの名盤の一つで、「音の錬金術師」ラヴェルの華麗かつ複雑な楽譜を、艶っぽい音色、中盤から後半へのダイナミックで熱気を帯びた盛り上げていきます。オーケストラとの相性も抜群で、マゼールの感性と一致し、マゼールらしい演出を見事に呼応した名演によって、粋で洒落たフランス音楽の精華が満喫できます。マゼールの曲者ぶりが実にうまく効果を発揮した、他者にまねのできないボキャブラリーでラヴェルを聴かせてくれている大変素晴らしい出来栄えとなりました。
DE  DGG  LPM18 675 マゼール ラヴェル・子供と呪文
DE  DGG  LPM18 675 マゼール ラヴェル・子供と呪文