34-14393
商品番号 34-14393

通販レコード→独ブルーライン盤[オリジナル]
ピアノの減衰音の自然さを証明する優秀録音盤 ― 晩年の5つのソナタ、これはベートーヴェンのあらゆる作品の中でも最高傑作。こうしたベートーヴェン創作の頂点に位置する作品は、明るい響きをもったマウリツィオ・ポリーニは合わないのではないか、ベートーヴェンはアルトゥル・シュナーベルやヴィルヘルム・バックハウス、ヴィルヘルム・ケンプが弾くのがぴったり来るのではないかと云う先入観を持っていたのも事実です。ポリーニは、ただ楽譜に書いてあることを忠実に演奏しているだけなのかもしれません。が、そこには間違いなく歌があり、その歌こそが、私たちに一見とっつきにくいような音楽を身近なものにしてくれるように私には思えます。レコード録音史上最初のベートーヴェンのソナタ全曲録音をしたシュナーベルの〝ソナタ協会盤〟が日本からの予想外の予約による採算を得て、市場での発売盤が実現。大ピアニストたちの人生をかけた全集録音が数々期待されましたが、バックハウスは第18番の第3楽章を弾いている途中心臓発作を起こし、同時進行していたステレオ録音の全集は未完に終わり、第29番『ハンマークラヴィーア』はモノラル録音盤で補われている。堅牢な構築性と知的な解釈に裏打ちされた明晰な合理性、そのうえで示される雄大なスケール感と豊かな風格が醸し出す深い味わいのバックハウスの録音から6年後。1975年6月、ポリーニが33歳で録音したベートーヴェン第1作がいきなり後期ソナタということで話題ともなった第30番・第31番は、ミュンヘンのヘルクレスザールで録音されたものでした。続いて1年半後の1977年1月にウィーンのムジークフェラインザールで、同じく後期の第29番『ハンマークラヴィア』と、第28番・第32番を録音、以上計3枚のLPアルバムは、集中力の高い研ぎ澄まされた演奏により圧倒的な高評価を獲得、世界を驚かせました。そしてアナログ録音究極完成期の成果を示す、ピアノの減衰音の自然さを証明する優秀録音盤としても話題を提供していました。3大ソナタの第14番『月光』は1991年6月、第23番『熱情』は2002年6月、第8番『悲愴』は2002年9月といったペースで進められ、2014年6月に録音された4大ソナタに数えられる第17番『テンペスト』を含む第16〜20番で完結。実に39年の年月を要したことになります。なかなか潤沢なリリースとはならず未完に終わるのか、「後期以外の作品の録音には興味がないのか」と思っていました。結果は、これほどに特異で複雑な内容を秘めたベートーヴェンのソナタ全集は例が無いのではないでしょうか。多分、この全集はおそらくポリーニの人生そのものと言っても過言でないでしょうし、過去にポリーニの演奏に一度でも離れがたい想いを持った経験が無い方には、この全集はとてもお薦め出来るようなものではないのかも知れません。しかしながら、カンタービレのイタリア出身ポリーニならでは何かが詰まってるセットです。
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マウリツィオ・ポリーニの国イタリアではピアノ音楽にオペラのヴェルディは愚か、ロッシーニやプッチーニにさえ匹敵するものがない。そのためポリーニは自国のものでないベートーヴェンやショパンを弾くのが、彼の演奏にはあまりにも強いイタリア的性格が示されていた。すなわち明晰な感覚美による合理的な造形である。そこに現されるクリアな美しさは、まさに地中海の伝統とも言える古典主義を思わせたが、ポリーニにおいては、それが過去を懐かしむのでなく、常に現在と密着している。イタリア人の国民性の特色は現実に足を踏まえたリアリズムにあるが、ポリーニの音楽にはそのことが強くにじみ出ている。このようなピアニストが、ある意味ではヴェリズモの作曲家以上にリアリストだったベートーヴェンの曲を、見事な平衡感を持って表現するのは不思議ではないが、ポリーニの場合はそうした音楽の感受力が知的な秩序への意図とオーヴァーラップしており、そこにベートーヴェンの意志的な力を改めて示すことになったように思える。勿論そうしたことが一朝一夕に行われるはずもないが、ポリーニの場合その成熟への未知をまっすぐに進んでいるように見えながら、実は何回か大きな壁にぶつかってきたとも言えるのである。ポリーニは1960年の第6回ショパン国際ピアノコンクールで、聴衆の圧倒的な支持を得て 優勝しました。満場一致、審査員全員一致とも言われており、その時、審査員長を務めていた アルトゥール・ルービンシュタインが「技術的には我々審査員の誰よりも上手い」と絶賛したのが 彼の優勝を確定的にしたとも言われています。当時、ルービンシュタインは名実ともに、 ショパン演奏の圧倒的な権威で、その発言の影響力は絶大だったことが想像されます。それは、ポリーニの鮮烈で並外れた完成度を誇るテクニックは他のピアニストを大きく引き離しており、それ自体が無二の大きな魅力にもなっていたことを雄弁に物語っています。間もなく、ポリーニは楽壇からふっつりと姿を消し、しかもその空白が十年も続いた。それは彼のこれまでの人生で最も困難な時代であったとも考えられるが、モーツァルトに続いて登場した、このベートーヴェンを聴くと、この間にも彼は何かの岐路に立ったのではないか。彼の弾くベートーヴェンは、地に足をつけた強い安定感が感じられる。このピアニストにまつわる病的な噂はあるが、考えてみればポリーニの初録音は18歳の時であり、そのことを考慮すればポリーニのそうした演奏は、やはり驚異的なものであった。いや、ベートーヴェンを引き合いに出すまでもなく、そもそもはじめからレコードでも安定感が存在していた。それは具体的にいうと克明端正な拍子の刻みやテンポの保持、ピアノ的な技巧の確実さによって支えられている。
1975年6月ミュンヘン、ヘルクレスザール(第30番・第31番)、1977年1月ウィーン、ムジークフェラインザール(第29番『ハンマークラヴィア』、第28番・第32番)でのセッション、ステレオ録音。優秀録音盤。3枚組。
DE DGG 2740 166 マウリツィオ・ポリーニ ベートーヴェ…
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