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ヴィヴァルディの協奏曲など、もはや珍しくもない ― イ・ムジチ合奏団の抑揚たっぷりの歌うような演奏を聴くと、そんな思いにかられる。ヴィヴァルディはイタリアの作曲家ということもあり、マンドリン等の撥弦楽器をソロにした協奏曲もいくつか残している。それはこの楽器の愛好家を中心に支持され演奏され続けている。マンドリンは、庶民に愛され、長い歴史を生き抜いた伝統ある楽器。しかし、オーケストラからはずれ、貴族や富裕層から離れていった。純音楽の歴史の中でのギターのための作曲は非常に多いといえないが、またすくないともいえない。とかくバロック時代から一流の作曲家によってギター曲は書かれているが純音楽畑の大作曲家の作品は稀だといった方がよいだろう。ギターの演奏も極めて巧みであったパガニーニやボッケリーニが協奏曲やヴァイオリンとの二重奏曲、ギター三重奏曲、四重奏曲などいくつか書いていたのが目立つくらいである。アンドレス・セゴビアの出現以来、近代ギター奏法の発達とともにヴィラ・ロボスをはじめ、かなりの人がギターの作品を書いている。しかし、ギター協奏曲となればさらにすくない。現在、ギター協奏曲として演奏されレコードもあるヴィヴァルディやハイドンの協奏曲は元来はリュートを独奏楽器として作曲されたものであった。ギターは非常に表現力の豊かな楽器であるが、音量が小さいことが協奏曲の独奏楽器としてすくなからぬ制約を与える。近代に至って室内協奏曲的な試みでギターを独奏楽器とした作品が書かれるようになったが、1939年に時を同じくして現代ギター協奏曲の傑作といわれるロドリーゴと、カステルヌオーヴォ=テデスコの作品が書かれたのは奇跡というべきであろう。ことにロドリーゴの「アランフェス協奏曲」は、ギターにあまり関心を持たない人にも愛聴されているほど名曲のきこえたかい。ドイツのベルリンにあるクリントヴォルト=シャルヴェンカ音楽院で作曲とピアノを学んだが、独学でギター奏法を習得し、ギターで弾けると分かれば何でも弾くジークフリート・ベーレントの技術は、それ自体非常に達者なものであった。それまでギターの主流を占めてきたスペイン流の解釈や表現法を極力排し、リュートなど世界中の擦弦楽器の作品の発掘や、新しい作品の紹介に意欲的に取り組んでいる。ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」の第1楽章など、旋風が吹くように快速調で駆け抜ける。伴奏がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団である「アランフェス協奏曲」はかなり珍しく、現在でもほぼ唯一ではないでしょうか。当時ヘルベルト・フォン・カラヤン他との録音会場であったベルリンのイエス・キリスト教会での録音は、現在聴いても水準以上の出来であり、ギターの音色もしっかりと捉えられている優秀録音です。また他の多数の録音と比較してテンポが速めと言われているが、一聴すると、音楽を無視して最速で弾いている訳では決してなく、確かな技巧と信念を持った上で曲に最大限敬意を払った名演であることがわかるだろう。オーケストラもベーレントに触発されて第3楽章では豊かな感興も見られるなど、聴きどころのある名盤です。
フィリップス・レーベルの雄、イ・ムジチ合奏団がドイツ・グラモフォンに出張してジークフリート・ベーレントと入れた『18〜19世紀のギター協奏曲集』。という形だが、1968年10月オランダ、フィリップス・スタジオでの録音。同様に、ヘンリク・シェリングのヨハン・ゼバスティアン・バッハ「独奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」もフィリップスで録音され、ドイツ・グラモフォンから発売されていた。さて、本盤の演目はヴィヴァルディのトリオ・ソナタ(RV.82)の編曲とリュート協奏曲(RV.93)を基にするハ長調とニ長調の2曲、フェルナンド・カルッリ(1770〜1841)のギター協奏曲作品140とマウロ・ジュリアーニ(1781〜1829)のギター協奏曲第1番イ長調作品30の4曲。カルッリの協奏曲は、1969年レコーディング当時、第1楽章だけがスコアが知られていたので、単一楽章版での演奏になる。単一楽章版ではあるが、完全版で録音したぺぺ・ロメオ盤と比べて、技の切れ味の鋭さではベーレント盤は捨てがたい。ジュリアーニの協奏曲は、ウィーン古典派全盛期に彼の地で活躍していたのもうなづける佳曲で、古典的な構成と和声感、ロッシーニ風とでもいったらいいだろうか、明るく清涼な曲想。流布している短縮版ではなくて、全曲版による演奏である。第1楽章は堂々とした序奏付きのソナタ形式、第2楽章は短調に転じ、シチリアーノのリズムにのせて抒情的なフレーズが続く。第3楽章はアラ・ポラッカのロンド・アレグレットで快活なリズムにのって、ギターの特性にあった、いかにもジュリアーニ調のフレーズに彩られている。伴奏がイ・ムジチなので、スコアにオプションの指定がある管楽器は備わっていないが、イ・ムジチの音色の豊潤さで、この曲のもつ古典的体裁を余すところなく表現している。しかも、スリリングに聴かせる面白さが、この演奏にはある。生前ドイツを撥弦楽器文化の中心地にすると息巻いていたベーレントの独奏は、腕が鳴ってしょうがないと言わんばかりの芸達者ぶりを示す。
  • Record Karte
  • 1968年10月オランダ、フィリップス・スタジオでの録音。Engineer – Anton Buczynski, Recording Supervisor – Vittorio Negri.
  • DE DGG 139 417 ジークフリート・ベーレント&イ・ムジチ…
  • DE DGG 139 417 ジークフリート・ベーレント&イ・ムジチ…
Vivaldi&Carulli:Gtar.Concertos
Behrend
Deutsche Grammophon
1994-03-01