34-20055
商品番号 34-20055

通販レコード→瑞ブラック銀文字盤
引き締まった弦楽と、壮麗な金管セクションの見事な融和、立体的なフレーズの受け渡しが強く印象に残ります。 ― ケンペの数あるレコーディングの中でもきわめて人気が高いのがブルックナー作品で、堅牢な構築美、いかにもドイツ的なオーケストラのシブい音が作品にピタリとはまっています。造形感覚もあくまで雄大、しかもその芯には強い力がみなぎっており、ケンペ絶好調時ならではの逞しい音楽づくりが実に快適。この録音が登場した1970年代は、各社から方式乱立の状態で4チャンネル・レコードが発売されていた時期にあたり、2チャンネル収録の音源でも、残響付加などして擬似的に方式転換のうえ4チャンネル・リリースされていたという、今にして思えばなんとも大らかな時代でもありました。ケンペの録音もご多分に漏れず、EMI(Electrola)のシュトラウスにしても、このEX LIBRISのブルックナーにしても、4チャンネル仕様に変換して発売されました。オーストリアの高級レコード・クラブ「Ex Libris」は、有名レーベルから選りすぐりの名録音を独自の高品質プレスで頒布していた事で知られます。1950年から60年代にかけて、レコードクラブ Ex Libris として知られており、有名なスイスのスーパーマーケットチェーンでレコードを受け取るのですが、一般的には購入できず、一定の年会費を収めている唯一のクラブ会員が登録店から購入することを許されました。そのメンバーに成るためには、かなり高い料金を支払わなければならず、わずかの裕福高齢者が利用していたレーベルです。オリジナルテープからカスタム・プレス。再生音の印象が違うのが特色です。それぞれレコード・レーベルには音作りに個性があり、発売時の狙いできつめな印象になっているのもありますが「Ex Libris」で聞いてみると自然な音場感で楽しみ易い。盤質も良く、プレス時の不満も感じない面白さがあります。
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ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe)は1910年ドレスデン近郊ニーダーポイリッツに生まれ、1976年チューリヒで死去したドイツの指揮者。ケンペはベームやカラヤン同様ドイツの歌劇場からの叩き上げで、その優れた職人的手腕とスケール雄大にして情緒豊かな音楽性、そして物腰の柔らかな誠実な人柄によってオペラにコンサートに国際的に活躍した名指揮者でした。1949〜52年ドレスデン国立歌劇場の音楽総監督、1952〜54年バイエルン国立歌劇場の音楽総監督のほか、ウィーン国立歌劇場、ロイヤル・オペラ、メトロポリタン・オペラ、バイロイト音楽祭などの指揮台に数多く登場したほか、1961〜63年と1966〜75年にかけてロイヤル・フィルハーモニーの首席指揮者、1965〜72年にチューリヒ・トーンハレ管、1967〜76年にはミュンヘン・フィルハーモニーの首席指揮者を歴任しました。1955〜56年に一時病気のため演奏活動を中断、病から復帰後、新たな意欲を燃やしてベルリン・フィルやウィーン・フィルを指揮してEMIへの録音を盛んにおこなうようになり、精力的で一気呵成なものから、巨匠的な雄大なアプローチまで多彩なケンペの音楽をセッション録音することになります。ステレオ録音では、ベルリン・フィルとの有名な『英雄』や『幻想交響曲』『新世界より』『ドン・キホーテ』、などなど。 ケンペ独特の語りかけるようなフレージング、アーティキュレーションは、時として「あれっ?」と思うものの、それが人間味なのでしょう。その音楽の優しさ、潤いに感動。端正でオーソドックスなようでスケールが大きく大胆、心意気がオーケストラの楽員みんなのすみずみまで行きわたっているのが手に取るようにわかります。ケンペといえば、渋い、地味、本格派、といったイメージで見てきた。はたしてそれであっているかしら。
クーベリック、サヴァリッシュ、ケンペがバッハの4台のピアノのための協奏曲で共演するリハーサル映像は、片手に屈指したいほど良い。繰り返されるフレーズにメリハリを付けて退屈した音楽にならないように全体を見晴らすクーベリックに、サヴァリッシュは脇にいるコンサートマスターと何度もひそひそ話を繰り返していたが、4人のピアノの配分を変更することを提案する。それをクーベリックが同意すると、サヴァリッシュはケンペに丁寧に説明していた。ずっとケンペは周りに従うようで、30分のリハーサルは終わるのかと思ったら最後の最後、みんなに語りかけて「本番もこれで行こう」と場のムードが整う如くみんなが散開してリハーサルは終わった。普段ピアノを弾く姿を見ないであろう大指揮者たちの共演だから、握手ぐらいするかと思ったが個性が良く出ていると思った。表面から感じる印象はごく一部の彼しか捉えたとしか云えず、ケンペの持つ本質は、堅固な構成感、優れたバランス感覚、そして作品の深い読み、どれをとっても抜群で、しかも表現力豊かなのがわかる。また各声部の透明で豊かな響きは、もともとオーボエ奏者であった感性から来るものだ。ピアニストとしてモーツァルトの協奏曲のレコードがヒットしていたり、名歌手たちのピアノ伴奏を務めたリサイタル盤もある指揮者、元ヴァイオリニスト、ヴィオリスト出身の指揮者が居たくらいに、当時の演奏家の凄さを思い知らされるのは、1929年、ケンペはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のオーボエ奏者で、同時にブルーノ・ワルターが指揮者、シャルル・ミュンシュがコンサートマスター、フランツ・コンヴィチュニーが首席ヴィオラ奏者だった、今から思えば雰囲気はどうだったのだろうかと妄想広がるという事実からである。客演・録音したオーケストラは多数にわたり、初期のフィルハーモニア管弦楽団、その後のロイヤル・フィルハーモニーやBBC交響楽団、ロンドン交響楽団、さらにはベルリン・フィル、バンベルク交響楽団、バイエルン放送交響楽団、そしてシュトゥットガルト放送交響楽団、ミュンヘン・フィルと数えしれない。他にもウィーン・フィルやアムステルダム・コンセルトヘボウ交響楽団にも客演した。そしてなんといってもシュターカペレ・ドレスデンとは特に頻繁に客演、録音も多く残した。渋く派手さはないが醸し出す音楽は、十分に思考を重ねられたうえでの音の発露であり、聴けば聴くほど感銘に値する。あらゆる人から尊敬され愛された人であったらしく、さらなる音楽の深みはケンペ自身の人柄の良さから来ているのだろう。
1971年11月12、13日チューリッヒ、トーンハレでのセッション・ステレオ録音。1973年発売。
CH EXLIBRIS EL16 607 ルドルフ・ケンペ ブルック…
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