34-15902

商品番号 34-15902

通販レコード→豪 ブルーライン盤

ハープの魔術 ― スペインではハープはかつて特別な地位にありました。セビーリャとグラナダで16世紀前半に出された法令では弦楽器製作者はチェンバロやリュートとともにハープの製作が義務付けられていましたし、17世紀初期までは教会をはじめ広く一般に用いられており、当時多くの貴族も演奏していたそうです。さて、ヘンデルがオルガン協奏曲作品4第6をハープのために編曲した「ハープ協奏曲 変ロ長調」が、音楽史上最初の〝ハープ協奏曲〟とされる。バロックや古典派の時代にも作曲されているが、むしろ近代、現代に作品が多い。モーツァルト時代、グランド・ハープがコンサート楽器として普及・認知されていった。ご大層な硬いクラシック音楽とは違ってて、あくまでも人を喜ばすような心地良い楽曲である。バッハ、ヘンデルの曲もハープの為に書かれたかのように素晴らしい。1720年にはイギリスの貴族たちによってオペラ運営会社「王室音楽アカデミー」が設立され、ヘンデルはその芸術部門の中心人物となった。ヘンデルはそのアカデミーのために出演する歌手と契約を結ぶために1719年にドイツを訪れた。このときバッハは、ヘンデルに面会を求めたが、最初はすれ違いになり、2度目はヘンデルが何らかの事情で面会を断ったまま帰英してしまったが故、同時代に活躍しながらも生涯出会うことはなかった。バッハが主として教会の礼拝で用いる音楽=教会音楽で活躍したのに対し、ヘンデルはオペラや劇場用のオラトリオなど、劇場用の音楽で本領を発揮した。バッハが「音楽の父」と評されるのに対し、日本ではヘンデルを俗に「音楽の母」と呼ぶこともあるが、結構なことですが、このとき両者が意気投合していたら、嘸やクラシック音楽のその後は模様代わりしていそうだ。現代においてハープが本格的なコンサート楽器として取り上げられた例は、ヘンデルのハープ協奏曲などですが、さて、ハープ奏者には女性が多い。ハープ界の女王と云えば、まず最初に我々はフランスのリリー・ラスキーヌの名前を思い浮かべますが、ハープ界の国王といえば、かの高名なフランスの作曲家モーリス・ラヴェルが絶賛するスペインの世界的ハープ奏者ニカルーノ・サバレタでしょう。ギターと同じように爪弾くには力が必要で、今はともかく、この頃はやっぱり「男の子」が強かったはず。鐘や鍵盤楽器など「機械的」に鳴らされる楽器を除けばを最も重い楽器。本当は男の楽器だったろう。サバレタの安定感のあるクリアな演奏が曲の魅力をうまく引き出している。サバレタの表現は大変紳士的であり、音楽的な格調が高い点もとても素晴らしい。スペインの巨匠指揮者のガルシア・ナバロ(1941~2001)スペインの血のようなものや、いかに自由に音楽を拡げるかというエッセンスを、本盤は優雅で華やかな雰囲気のハープの音の世界を満喫出来る。ハープの魅力が余すところなく詰め込まれた名盤である。こういう盤を聴いていると、本当に幸福な気分になれます。
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ハープは笛と並んで歴史の古い楽器です。ギリシャ神話にも度々登場し、特に動物から木々や岩までも魅了したオルペウスの竪琴は星座にもなりました。ハープの前身の一つにキタラがあります。ギリシャでは今でいうギターを表す名詞になっていますが、いわゆる「竪琴」という日本語は便利なもので、「リラ」とか「弓型ハープ」とか「フォルミンクス」、そして「キタラ」を区別することなく、このての楽器を「たてごと」として弦楽器の分類範疇におさめてしまう。キタラの共鳴胴から伸びている2本の柱は太めで時として共鳴胴と一体になっている。プレクトラム ― ギターでいうピックで弦をはじいていたようだ。ピアノと同じように張った弦を鳴らす楽器だが、ピアノのようなハンマー装置でたたくのではなく、人間の手で直接にはじくのだから、もっと優しい音が出る。奏者が抱えるようにして弾くので目立たないけれども、大きな共鳴胴も持っている。だから音が豊かにふくらむ。現代のダブル・アクション・ペダルの形になったのは19世紀前半の頃。その後19世紀末にはエラール社が2列の弦を交叉させて並べたクロマティック・ハープを開発し、ドビュッシーがこの楽器のために「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」を書いたりもしました。マーラー以降、ドビュッシー、ラヴェルらによって好んで活用されたハープですが、決してソロ・レパートリーが多いとは言えません。しかし、その類希な、清らかで可憐な音色を愛した作曲家たちは、数少ないながらも煌くようなハープ作品の歴史を築き上げてきました。ハープ奏者には女性が多い。指揮者の岩城宏之氏によると、日本ではとくに女性の比率が高いそうである。そうなると、社会的ジェンダー意識からしても、ハープは〝優美な音の楽器〟という評価がより強く持たれてしまいそうな感じがする。でも、いまどきこんなことを書くとハープ奏者の大半の機嫌を損ねそうだ。スペインではハープはかつて特別な地位にありました。15〜16世紀にはアラゴン王国の国王フェルナンド2世に仕え、その妻であるカスティーリャ王国の女王イサベル1世にハープを教えたというルドビコというハービストがおり、彼の歴史的遺産を保存研究する協会が現在も活動しています。セビーリャとグラナダで16世紀前半に出された法令では弦楽器製作者はチェンバロやリュートとともにハープの製作が義務付けられていましたし、17世紀初期までは教会をはじめ広く一般に用いられており、当時多くの貴族も演奏していたそうです。20世紀になってスペインではルイサ・メナルゲスやニカノール・サバレタ、マリサ・ロブレスという歴史的名手も活躍。ロドリーゴはサバレタのために「アランフェス協奏曲」をハープ用に編曲、ロブレスには彼女の結婚祝いにセビーリャ幻想曲『ヒラルダの調べ』を贈っています。そのような美しい音を持ちながら、というより、美しいソノリティがために、ハープはクラシックの〝本流〟である19世紀ドイツ・オーストリア音楽では常に脇役の地位に置かれてきた。「オーケストラの美しい音担当」の役割に固定されてきたのです。その役割からなんとか脱出しようというのが、少なくとも現在、ハーピストとして活躍する人たちの共通の悲願なのではないかと思う。協奏曲では、ヘンデルのハープ協奏曲、1778年に書かれたモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」以来、ドイツ・オーストリアで活躍した作曲家による作品は、やはり18世紀のクルムフォルツの作品と、19世紀のライネッケの作品ぐらいしかない。曲が少ないのであれば、演奏機会の少ない曲であってもどんどん紹介し、新しい企画にも次々に手をつけていこうと積極的に、オーディオの醍醐味を聴かせたいと、レコード会社も取り組んでいた。18世紀から近代にわたるハープ音楽の全貌、真の魅力が、20世紀最高のハーピスト、サバレタによって明かされます。
ハープの世界的巨匠ニカノール・サバレタが来日したのは1960年と1962年の2回、いずれも大阪国際フェスティバルに招かれての来日だった。サバレタはハープという楽器の可能性を追求し、近代ハープ界の中にあって独奏楽器として真に独立した地位を築いたと言えます。近代ハープの立役者といえば、まずフランスで主に活躍をしたラスキーヌの名が上げられますが、サバレタは故国のスペイン作品や古典の作品、近代作曲家の作品まで広く演奏した面から伺えるように、幅広いレパートリーを持ち、世界中で演奏を繰り広げました。サバレタは様々な作曲家から曲を捧げられており、ハープという楽器のレパートリー増大にも多大な貢献をしています。その演奏を聴いて、ラヴェルにも絶賛されたと言われるその透き通った音色と、雑音をさせない素早いペダル操作に何よりも吃驚される。サバレタが自身で考案したと云う8本ペダル付きの楽器は、ドイツのシュワーベン地方、シュターンベルグ湖畔に工房を構えるハープ製造マイスター、ヨゼフ・オーバーマイヤー氏の作品で、メカニックが精密で音程が極めて正確だ。各ペダルは車のギアー・チェンジの様に足で踏んでこれを3段階に切り換える様になっている。オクターブ7つの音の其々に専用のペダルがあり、演奏者の右足の側に手前からミ、ファ、ソ、ラと4本、左足側にシ、ド、レと3本、左右に別かれて付いている。ペダル中段がピアノの所謂白鍵=ナチュラルの音で、下段にすると半音高くなってシャープの音に、上段にすると半音低いフラットの音になる。ペダルを全部中段にした状態で全ての音がナチユラルになり、ピアノでいう白鍵だけのハ長調の音階になる、その状態でファのペダルを踏み込んでファ♯にするとト長調の音階になる仕掛けだ。しかし、ピアノには個々の音にダンパーが付いていて、鍵盤から指を離すとダンパーが弦を押さえて音が鳴り止む仕組みになっているが、ハープはギターと同様に指で弦を弾いて音を出すのだが、弾いた後は音は鳴り放しになる。そこで、必要な個所では掌で弦を押さえて鳴りを止めることになるが、弾きながら掌で音を止めるのは物理的に限界があり、音が濁ってしまうことが避けられない。そこで考案された、8本目の特別なペダルで、この操作が低音用のダンパー機構をなし、ピアノのダンパーの役目をする。サバレタはこの特別のペダルを駆使するだけでなく、こまめに指先でも音を止めている。だから音が濁らず、アーティキユレーションが鮮明だ。

Johann Sebastian Bach ・ Georg Friedrich Händel ・ Nicanor Zabaleta, English Chamber Orchestra, Garcia Navarro ‎– Harfenkonzerte • Harp Concertos

Side-A J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集(サバレタ編曲ハープ版)
  1. 協奏曲ヘ長調 BWV978(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ト長調 RV310) Konzert F-Dur BWV 978
  2. 協奏曲ハ長調 BWV976(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ホ長調 RV265) Konzert C-Dur BWV 976
  3. 協奏曲ト長調 BWV973(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ト長調 RV299) Konzert G-Dur BWV 973
Side-B ヘンデル:オルガン協奏曲集(サバレタ編曲ハープ版)
  1. 第10番 op.7-4, HWV309 Konzert D-Moll Op. 7 No. 4
  2. 第5番 op.4-5, HWV293 Konzert F-Dur Op. 4 No. 5
ニカノール・サバレタ・サラ(Nicanor Zabaleta Zala)は、1907年1月7日、スペインのサン・セバスティアン生まれのハープ奏者。民族的にはバスク人である。1914年に、素人音楽家だった父親に古物商に連れて行かれ、ハープに出会う。やがてマドリード音楽院教員のビンセンタ・トルモ・デ・カルボと、ルイーザ・マナルケスに師事する。1925年にパリに留学して、1925年からパリでマルセル・トゥルニエとジャクリーヌ・ボロに師事する。翌年にパリで公式に演奏会デビューを果たした。1930年代から欧米各地で活躍し、1934年には北米デビューを果たした。日本には1960、62年に大阪国際フェスティヴァルに来演した。彼は自分で考案した8つのペダルを持つオーベルマイヤー製のハープを使用しており、透明で輝かしい音色と完璧な技巧でラヴェルにも絶賛された。サバレタは様々な作曲家から曲を捧げられており、ハープという楽器のレパートリー増大にも多大な貢献をしています。近代ハープの立役者といえば、まずフランスで主に活躍をしたリリー・ラスキーヌの名が上げられますが、サバレタは故国のスペイン作品や古典の作品、近代作曲家の作品まで広く演奏した面から伺えるように、幅広いレパートリーを持ち、世界中で演奏を繰り広げました。サバレタの録音は、およそ300万枚の売り上げになると見積もられている。最後の演奏会は、1992年6月16日にマドリードで開かれたが、このとき既に健康は衰えていた。1993年4月1日、プエルトリコにて没。
  • Record Karte
  • 1978年12月ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール録音。Harp, Arranged By – Nicanor Zabaleta, Engineer – Heinz Wildhagen, Producer, Recording Supervisor – Dr. Rudolf Werner.
  • AU DGG 2531 114 ニカノール・サバレタ ヘンデル&am…
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